可愛がってあげたい、強がりなきみを。 〜国民的イケメン俳優に出会った直後から全身全霊で溺愛されてます〜
***
 
「あなた、すごいところに住んでるのね」

 窓辺で景色を眺めながら、母はため息をついた。

「こっちにどうぞ。お茶、入れたよ」

 湯呑みを手に、母はしみじみと言った。
「本当に郁ちゃん、結婚したんだよね。なんだかまだ信じられなくて」

「婚姻届の写し、メールで送ったでしょう?」
「そうだけど、メールじゃ実感わかないわよ」

 婚姻届はもちろん本名を記入するので、夫の欄の署名は「島内宗介」になっている。

 夫は榊原宗介だって言っておいたほうがいいかな。
 驚いて、腰抜かされても困るし。

 いや、やっぱりサプライズにしよう。その方が面白い。

「どんな人かドキドキするわ」
「そう?」

「だって学生のころから一度も家に彼氏を連れてきたことないじゃない。郁ちゃん、仕事も忙しそうだし、てっきり結婚に興味がないんだと思ってた」
「今まで、結婚したい相手がいなかっただけだよ」

 母は微笑んで言った。
「じゃあ、よけい楽しみ。郁ちゃんのお眼鏡にかなった人がどんな人なのか」
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