可愛がってあげたい、強がりなきみを。 〜国民的イケメン俳優に出会った直後から全身全霊で溺愛されてます〜
 式は滞りなく進んだ。

「では誓いのキスを」
 牧師さんの言葉に、宗介さんは甘やかに微笑み、わたしのベールに手をかけた。

「愛しているよ、郁美」 

 愛のささやきと共に、彼はこの場には、どう考えてもふさわしくない長すぎるキスをした。

「あの場でまで見せつけなくても」と後で亮介さんに冷やかされたほど……

 この式のアレンジも向井さんが力を尽くしてくれたと聞いた。

 彼女が宗介さんのマネージャーで本当に良かった。
 どれほど感謝してもしきれない。

 わたしは退場する前に、壇上から彼女に向かって深々と頭を下げた。

 その気持ちが通じたかのように、向井さんは、今まで一度も見たことのない、晴れやかな顔で笑いかけてくれた。

 これまで、わたしは結婚式に憧れを抱いたことがなかった。
 いや、必要だとも思っていなかった。

 けれど、参列してくれた全員が、心からの笑顔で祝福してくれているのを見たとき、婚姻届を出した時とはまるで違う感慨が胸に迫ってきた。

 ヴァージンロードを歩きながら、宗介さんに「ありがとう」とささやいた。

 彼は繋いでいた手をぎゅっと握ってこたえてくれた。
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