可愛がってあげたい、強がりなきみを。 〜国民的イケメン俳優に出会った直後から全身全霊で溺愛されてます〜
 リビングの照明を落として、革張りのソファーに並んで座る。
 BGMはスローなテンポのジャズ。
 窓からは、東京タワーとレインボーブリッジを臨む夜景。
 
 こういうシチュエーションになると、このマンションはがぜん本領を発揮する。

 まさに、ドラマの一場面。
 しかも、隣にいるのは榊原宗介だし。

「じゃあ、乾杯」
 グラスが合わせ、見つめ合いながら、細かな気泡を立てるシャンパンを口にする。

 アルコールが喉をすべりおり、胸のあたりがかっと熱くなる。

 つまみはキウイを生ハムで巻いたもの。
 手軽で美味しいので、よく作る。
 定番のメロンはもちろん、秋はいちじくも美味しい。

「奈月さんも感激してたよ。宗介のハムレット」
「可愛い子だな、彼女」
「うん。でも、あれでけっこうしっかり者だよ」

「で、郁美はどうだったんだよ、俺の演技」

「引き込まれた。芝居を観ているあいだは夫だってこと、忘れてた」

「それは、最高のほめ言葉だな」
 彼はわたしの肩に手を回し、抱き寄せて、チュっと音をたててキスした。
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