可愛がってあげたい、強がりなきみを。 〜国民的イケメン俳優に出会った直後から全身全霊で溺愛されてます〜
「初日が開くまでは、俺が本当に主役なんてできるのかって、ものすごく怖かったよ」

「うん、なんとなく感じてた。いつも以上にナーバスになってるなって」

「そっか。言葉にしてしまうと心が砕けそうだったから、口に出せなかったんだよ」

 確かに、そういう場合、下手な慰めなんて、役に立つどころか害になるだけだろう。
 役者は、舞台に上がれば、誰の助けも得られないのだから。

「俺だけじゃなくて、大ベテランの先輩も、初日が開く前は緊張で眠れなくなるって言ってる。それだけ、毎回が真剣勝負なんだよな」
「厳しい世界だね」

 そのシビアな世界で、結果を出している宗介をあらためて誇らしく思う。

 わたしは彼の肩に頭を預けた。
 左手で髪を弄びながら、彼は話を続けた。

「でもさ、舞台に上がる直前、俺はいつも郁美の笑顔を思い浮かべてる。そうすると、すっと気持ちが落ち着くんだ。郁美に最高の演技を観てもらいたい、そう思うと勇気が湧いてくる」

「宗介……」
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