可愛がってあげたい、強がりなきみを。 〜国民的イケメン俳優に出会った直後から全身全霊で溺愛されてます〜
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ミーティングルームに入るとすぐ、知花がお茶を運んできた。
くじ引きでもして、その役を勝ち取ったんだろう。
興奮で顔が上気している。
知花は全員の前に湯呑をくばり終えると榊原宗介の横に立った。
そして、後ろからのしかからんばかりに、彼の前方に湯呑みを置いた。
「熱いので気をつけてくださいね。あ、こちらに置きましょうか、こぼすといけないので」などと、少しでも滞在時間を伸ばそうという涙ぐましい努力をしている。
けれど、その努力も虚しく、知花は榊原の眼には止まらなかった。
残念ながら“ワンチャン”はなかったみたい。
まあ、そうだろうとは思ってだけど。
だって、とんでもない美女に囲まれているであろう人気俳優が、一般人に一目惚れなんて、どう考えてもあり得ない。
「すいません」
榊原宗介は、知花に目をやることもなく、ボソッと礼を言っただけだった。