可愛がってあげたい、強がりなきみを。 〜国民的イケメン俳優に出会った直後から全身全霊で溺愛されてます〜
「本気だよ。ショートボブのその髪型といい、パンツスーツを着こなしているところといい、もちろん顔も。まさにタイプなんだよね。俺の」

 わ、わ、わ、そんなはずはない。
 ぜーったい、からかわれているに決まってる。

 あわあわしているわたしをよそに、彼はさらにたたみかける。
 
「その、焦った顔もいいな。『わたし、仕事ができます』的なすまし顔よりずっといい。可愛いよ」

 わー、もうやめてー。
 脳が誤作動を起こして、完全停止してしまう。

 な、なんて答えれば?
 どう切り返したらいいんだろう。
 
 仕事上のピンチなら、いろいろ対処法が浮かんでくるけれど、イケメン芸能人にからかわれた経験なんてないから、頭が真っ白になってしまって言葉が浮かんでこない。

 どうにもいたたまれず、情けないことにただ俯いていたら、ようやく向井さんが戻ってきた。
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