可愛がってあげたい、強がりなきみを。 〜国民的イケメン俳優に出会った直後から全身全霊で溺愛されてます〜
 ふー、助かった。

「あの、橋本さん」
「あ、は、はい」

 彼女はとても言いにくそうに告げた。
「すみません。ディレクターからの連絡で急遽、撮り直すシーンがでてしまって。1時間後に戻ってきてほしいと」

「えっ、じゃあ悠長に雑談をしてる場合じゃないですね」

 すみません、こちらからお願いしたのに勝手ばかりで、と恐縮する向井さんにわたしは内心、ほっと息をついた。

「いいえ。お気になさらずに。じゃあ、残りの時間で会議を覗いて行かれますか? 今、定例の社内ミーティングをしているはずなので」

「よろしいんですか?」

「ええ、少しお待ちください。許可をもらってきますので」
 
 会議室では榊原さんから、そこにいるメンバーにいくつか質問をしてもらい、10分ほどでタイムアップ。

 こんなので、本当に参考になったのかな?
 と、若干首をひねりつつ、わたしは課長と一緒に地下駐車場まで見送りに行った。
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