可愛がってあげたい、強がりなきみを。 〜国民的イケメン俳優に出会った直後から全身全霊で溺愛されてます〜
「お世話になりました」
 向井さんが深々と頭を下げた。

「お役に立てたかどうか」
「そんな、とても丁寧なご対応をいただきまして恐縮してます」

「今日はどうもありがとう。橋本さん」
 榊原宗介が手を差し出した。

 拒否するわけにもいかないので、わたしも彼の手を握る。
 すると彼は一瞬、ぎゅっと力を込めた。
 たったそれだけのことなのに、なぜかドギマギしてしまう。

 彼は手を握ったまま、ふっとわたしのほうに顔を寄せ「会えて嬉しかった。またね」と、ふたりにしか聞こえない小さな声でそう言うと、さっと車に乗り込み、あっという間に去っていった。

 何だったんだろう、今の。
 またねって言われた気がするけど。
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