可愛がってあげたい、強がりなきみを。 〜国民的イケメン俳優に出会った直後から全身全霊で溺愛されてます〜
「はじめまして」
 その弟さんは、目尻に思い切り皺を寄せて、人の良い笑顔を向けた。
 あ、笑顔はあんまり似てないんだ。

 彼はテーブルに近づき、椅子を引いた。
「どうぞこちらへ」

「あ、すみません」
 紳士的でスマート。
 とても板に付いている。

 彼も自分の席につき、改めて自己紹介した。
「島内亮介です。兄貴がご迷惑をおかけしているようで、どうもすみません」
 そう言って、頭を下げる。

 すかさず榊原宗介が口をはさむ。
「おい、迷惑なんてかけてないって」

「迷惑以外の何物でもないよ。職場に毎日電話するなんて」

「他に連絡手段がないから、仕方ねえだろ」という兄は無視して、彼はわたしのほうに視線を向けた。

「うちの兄貴、高校のとき芸能界入りしたから、社会人としての常識に、ちょっとかけてるところがあって」

 すると榊原宗介が、隣に座る弟の頭を軽く叩いた。

「イテッ」

「こいつのことは気にしないで。運転手として呼んだだけなんで」

「ほら、やっぱり常識ないでしょう? 人遣いの荒さ、半端ないんですよ。この人」

 榊原宗介は弟さんのほうを見て、苦々しい顔をする。
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