可愛がってあげたい、強がりなきみを。 〜国民的イケメン俳優に出会った直後から全身全霊で溺愛されてます〜
 運転手役を仰せつかっている亮介さんと、初対面の人たちの前でお酒を口にしたくなかったわたしはノンアルコールワイン、宗介さんだけ、ハーフボトルのワインを頼み、乾杯をした。

 ワインがサーブされたすぐ後、美しく盛り付けられたアンティパストも運ばれてきた。

「えー、じゃあ、サッカーのドイツリーグに? すごいですね」
「はい。でも次の年、膝の靭帯を痛めて。手術もしたんですけどプロで続けるのは断念しました。日常には支障ないんですけどね。で、今は北斗繊維の営業ですよ」

 あ、北斗繊維にお勤めなんだ。

 なんたる奇遇。
 今まさに、わたしが業務改善計画を請け負っている会社じゃない。

 でも、まだ、うちに依頼が来ていることは社員の方には知らせていないはず。
 守秘義務があるので、ここでべらべらと明かすわけにはいかない。

「ふーん、でもご兄弟そろってすごいですね。俳優さんと、元とはいえプロサッカー選手だなんて」

「まあね。なんでだろう。親の方針なのかな。やるならとことん追求しろって、ほんのガキのころから言われてたよな」
 弟さんは榊原宗介の方を向いた。

「ああ」
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