可愛がってあげたい、強がりなきみを。 〜国民的イケメン俳優に出会った直後から全身全霊で溺愛されてます〜

***

 エレベーターが1階に到着した。
 わたしと亮介さんはここで降りる。
 宗介さんは地下まで行くそうだ。

 彼はここの敷地内にあるレジデンスの住人なのだそうだ。
 そういうところはやっぱり芸能人。

 なにしろ、この飯倉スクエア・レジデンスの家賃の高さは都内でも1,2を争うらしく、芸能人のほかはIT関連企業の若手社長や有名ユーチューバーなど、現代の富豪しか住めないと、もっぱらの噂だ。

 セキュリティも万全。
 さっき食事をした会員制クラブやサンライズ・テレビから、人目に触れずに行き来できる秘密の地下通路があるらしい。

 もうずいぶん長い間、このビルで働いていたというのに、一般人のわたしはそんなこと、まったく知らなかった。
 いや、知れ渡っていたら、まずいのだけど。


「ごちそうさまでした」

 エレベーターの外から宗介さんに挨拶をすると、「いや、こちらこそ」とぼそっとつぶやく。
 それから亮介さんのほうを見て念を押した。

「ちゃんと彼女を送ってくれよ」
「了解」
 亮介さんはにっこり笑って答えた。

 じゃあ、とふたりで出口に向かって歩きかけたとき「橋本さん」と呼びとめられた。

「はい?」
「また誘ってもいい?」

 極上の笑みを向けられて、わたしは思わずうなずきかえしていた。
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