可愛がってあげたい、強がりなきみを。 〜国民的イケメン俳優に出会った直後から全身全霊で溺愛されてます〜
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駅に向かう道を歩きながら、なんとなくモヤモヤする心を持てあましていた。
別れ際の宗介さんの、迷いを含んだ緊張した表情が目の前にちらつく。
そう。実を言えば……
呼び止められたとき、「部屋に来る?」と誘われるんじゃないかと、一瞬、思ってしまった。
ううん、期待したと言ったほうが正解かもしれない。
結局、彼が何も言わずにバイバイと手を振ったとき、肩透かしを食らったような気持ちになった。
自分の気持ちを掘り下げるまでもない。
もうすっかり、宗介さんに心を奪われていた。
ずぶずぶと、深い沼に足を踏み入れていた。
なにしろ……
日本のみならず各国の女性を蕩かす魅力の持ち主なのだ、彼は。
その彼に優しく接してもらって、好きにならないでいるなんてとても無理な話だった。
しかも、数回、食事を一緒にしているうちに、外見だけでなく中身もすてきな人だと知ってしまったわけだし。