可愛がってあげたい、強がりなきみを。 〜国民的イケメン俳優に出会った直後から全身全霊で溺愛されてます〜
「しっかり英気を養ってきて。その代わり、年明けまでの仕事はしっかりお願い」と。

 なんて、粋な計らい。
 やっぱりできる人だ、向井さん。

 明日は平日だけど、わたしはもちろん有給を申請した。
 その許可を課長にもらっていたとき、知花が通りかかった。

「珍しいですねー、仕事の虫の郁美先輩が有給なんて」

「最近、忙しかったから。さすがのわたしも骨休め。ごめんね、迷惑かけるけど」

「有給は働く者の権利ですから、謝る必要はないです。お土産は期待してますけど」

「うん、もちろん買ってくるつもり」

 よかった。誰と行くんですかって聞かれたらどうしようかと思っていた。
 親と行くという言い訳は用意していたけれど、わたしがつく嘘は知花にはすぐばれる。

「彼氏できたんじゃないですか?」としつこく食い下がられなくてよかった。
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