婚約者と親友に裏切られたので、大声で叫んでみました
(殿下も殿下だ)


 殿下とわたしは完全な政略結婚だ。
 広大な帝国の中にある小さな弱小国。皇帝の気まぐれで、いつ滅ぼされるとも分からない王国だ。他国の姫を迎えて警戒されるわけにはいかない。
 だから、王族の血統を確かなものとすること、貴族たちにも王家を特別な存在と認識させるために、王族の血が流れるわたしが選ばれた。

 互いに『恋』が何なのかも知らないうちに婚約を結んだし、殿下がわたしに対して愛情を抱けなくても仕方がないのかもしれない。けれど、謝罪も言い訳すらも一言も貰えなかった。つまり、彼にとって、わたしなんてその程度の存在なのだ。

 それにしても、いくら言い寄ったのがスピカの方だとしても、婚約者の親友に手を出すとはどういう了見だ。


(ホント、最低)


 殿下の婚約者として、妃教育や勉学に励んで来たわたしの数年間は何だったのだろう。身分の高い令嬢方からは嫉妬され、逆に低い令嬢たちからは近寄りがたいと避けられ、孤独を味わっていたわたしの人生は。


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