六〇三号室の女
スーツの上着とネクタイをベッドに放り投げ、くたびれた合皮のソファーに身を沈めた。

テーブルの上に置かれた安ウイスキーの瓶を眺めながら、あの女のことを考える。


いい女だった。あれほどの美人が人殺しとはね……


女の肉感的なシルエットが目に焼きついていた。

その艶かしい魅惑の曲線を思い浮かべると、俺は激しい欲情にかられた。


そういえば最近ご無沙汰だな。久しぶりに呼ぶか……


短期出張の唯一の楽しみといえば、女を買うことくらいだ。

この地方に滞在する時は、毎度世話になっているお気に入りの店がある。

今や俺はそこの常連客だった。

女房との夜の営みがなくなってからというもの、俺の性の捌け口はほとんどが娼婦だった。


疲れは溜まっているが……あっちのほうは問題ないだろう。


ソファーの上でうとうとしながらも、沸きたつ血液が一点に集中するのがわかった。
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