【短】犬丸、今日が最後だってよ。
一条くんと犬丸。
「…やられた、」
ガシャンッと大きめの音が響くまえ。
「楽しんでおふたりさんっ」と、クラスメイトの賑やか男子たちが笑いながら言っていたような…。
それから数秒もしないうちにはガチャッと、ナニかがしっかりと施錠される音がして。
ジャージ姿の一条(いちじょう)くんは厚い扉に手をかけるけれど、どうにもびくともしない。
「完全にはめられた。鍵かかってる」
率直に素直に、彼は喋ることができる人間なのだと驚いた。
いつも退屈そうに窓の外を見ている男の子で、しょっちゅう遅刻しては早退してゆくクラスメイトで。
「でも、ここのドアって…カギは滅多に使われないはずじゃ…、」
いつも誰かしら失くすからと、先生たちもカギは使わない体育館倉庫のはず。
「のはずなんだけどな。予防として最近になって補助錠が取り付けられたって、俺は聞いた」
「な、なんと…、」
< 1 / 25 >