【短】犬丸、今日が最後だってよ。
一条くんと犬丸。




「…やられた、」



ガシャンッと大きめの音が響くまえ。

「楽しんでおふたりさんっ」と、クラスメイトの賑やか男子たちが笑いながら言っていたような…。


それから数秒もしないうちにはガチャッと、ナニかがしっかりと施錠される音がして。

ジャージ姿の一条(いちじょう)くんは厚い扉に手をかけるけれど、どうにもびくともしない。



「完全にはめられた。鍵かかってる」



率直に素直に、彼は喋ることができる人間なのだと驚いた。

いつも退屈そうに窓の外を見ている男の子で、しょっちゅう遅刻しては早退してゆくクラスメイトで。



「でも、ここのドアって…カギは滅多に使われないはずじゃ…、」



いつも誰かしら失くすからと、先生たちもカギは使わない体育館倉庫のはず。



「のはずなんだけどな。予防として最近になって補助錠が取り付けられたって、俺は聞いた」


「な、なんと…、」



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