【短】犬丸、今日が最後だってよ。
だって“もうすぐ総長”さんの一条くんに気に入られちゃったっぽいから。
ぽーっと、一点を見つめることしか。
「でも珍しいね。君が自分から女の子に近づくなんて」
沙蘭くんは物珍しそうにしながら一条くんへと。
「…それくらい本気ってこと」
「さらっと格好つけるのやめてよー。…のわりには本人さん、まったく気づいてないみたいだけど?」
「これから気づかせればいいだけだろ。時間なんかたっぷりあるんだし」
余裕いっぱいの会話だ……。
私だけが茅(かや)の外。
そんなの犬丸だって、犬丸だって、
「いっ、犬丸もっ、来年は体育委員の総長になりたいと…っ!!」
「その場合は委員長な。つーか、そこ張り合っても意味ねえぞ犬丸」
思わずこぶしを握りながら立ち上がった犬丸、無事に空回り。
「…どうだ沙蘭、かわいいだろ」
「ふっ、はははっ!!確かにこれは独り占めしたくなるかもね」
「俺のだぞ」
「わかってるって」
一条くんと、沙蘭くん。
彼らはクラスが違うから、あまり絡んでいるところを見たことはなかったけど。
……きっとワケありな関係で間違いないと思いました。まる。