【短】犬丸、今日が最後だってよ。
「ってことで、わんこちゃん」
「わ、わんこちゃん……?」
初めましてのはずの沙蘭くんは、慣れたように顔を近づけてきた。
「君の平和な日々は今日で最後だから。明日から大変だよ、いろいろと」
「た、大変と…言いますのは、」
「今にもわかるんじゃない」
「わっ!」
ぐいっと引っぱられた腕。
バランスを崩した身体はトンっと呆気なくも支えられる。
「ほらね?うちの新しい総長さん、すっごい独占欲つよいから」
「だからなんで普通に言うんだよお前は」
「あっ、そうだったごめん」
秘密主義ではないらしい沙蘭くん。
口に加えて色んなものが軽そうな男、沙蘭くん。
「だけど、僕たちのことは信じていーよ。じゃあまた来週~」
「あっ、おっ、お疲れっす…!!!」
「ふははっ!それ野球部の挨拶じゃん」
「この子ならみんな気に入るんじゃない?」と、私たちへヒラヒラと手を振りながら体育館を去っていった。