やり手CEOはお堅い秘書を手放さない
やり手CEOはお堅い秘書を手放さない
素肌に感じるベッドシーツの質感、体を包む温かいものの心地いい重み。
体にいつもと違う感じを覚えて目覚めた私──夏目瑠伽(28歳)は、目の前にいる人をぼーっと見つめた。
だれ? 私、ひょっとして腕枕されてる……?
ぼやっとしていた頭が次第にはっきりしてくると、すぐにパニックに陥った。
待って、この人は!
すやすやと寝息を立てている男性は間違いなく見知った人だ。けれど、目を閉じていてもわかる端正な顔立ちの彼は、決して私の恋人ではない。
なんで? どうして、こんなことになってるの!!
あせるけれど懸命に落ち着いて、ゆっくりと記憶を手繰り寄せる。
昨夜は取引を模索しているメーカー社長の接待があった。
目の前ですやすや眠っている彼と一緒に接待に臨み、お酒を飲んだことまでは覚えている。
相手は酒造メーカーだったので、この先の取引を円滑に進めるために話は彼に任せ、私はメーカー社長自慢のお酒を勧めてくるまま飲み続けた。
メーカー社長の機嫌を損ねないように、適度な感想を伝えて笑顔を崩さずに……そのあとの記憶がない。
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