やり手CEOはお堅い秘書を手放さない
私から告白をしたんじゃなく、彼のほうからなんて予想外だ。喜んでいいのか、謝るべきなのか、どう反応していいのか迷ってしまう。
そのときの私はなんて返したんだろう……。
「だからもう一度言う。会社にとって有益であること以前に、俺は瑠伽を愛してるんだ。きみを失えば生きる気力がなくなる。どうにも離せないんだ。結婚してくれ」
「……はい」
こんなに情熱を向けられて、断る理由はない。
「私も、社長……隆文さんを愛してますから」
言い終わらないうちに彼の腕に囚われて、するっと頬を撫でた指が私のあごにかかった。
上を向かされて目を閉じた刹那、すらっとふすまが開いた。
「隆文、食事の支度ができたから……あらぁ、まあ! お邪魔だったかしらねぇ」
おほほほと笑う酒井さんの声がして、私は恥ずかしさでうつむいた。
「お祖母さん、開ける前に声をかけてください」
「ごめんなさいねぇ。でもうまくいったみたいでよかったわ。隆文から〝嫁は瑠伽ちゃんがいい〟と言われて私もすぐに同意したけれど、受けてくれるか心配だったのよ。隆文は非情だから」
「いいえ、隆文さんは非情じゃありませんから……」