バレンタイン

 窓際のテーブルに案内された彼は、彼女の腰に軽く手を添えて座らせると、自分もスッと席に着いた。

 その慣れた仕草は否が応にも、彼がもてる男性なのだということを知らしめる。


 私の早鐘を打つ胸は今にも押し潰されそうだった。



 響谷 蓮。

 私はずっと彼に憧れている。



 その彼が、今、ここにいる。


 悲しいかな、その瞳に映るのは私ではないけれど。


 それでもいい。




 ずっと憧れてきた彼と同じ空間に、いま私もいるのだから。










 
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