バレンタイン
「あのっ えっと」
私は何から切り出すのだったかを必死で思い出そうとした。
彼を待ち伏せていたこの30分余りの間、初対面である私が彼にどう話し掛けたら良いのかをずっと考えていたのに。
いざその時になってみると、全く以ってその時間が無意味だったことを思い知らされる。
そのくらい頭のなかは真っ白だった。
「あの その」
「うん?」
パニックを起こしている私の目の前に、彼は聳え立って優しく聞き返してくれた。
焦って言葉を失っている私に苛々するでもなく、二の句を急かすでもなく。
そんな彼のゆったりした態度に、心はやや平常心を取り戻す。
ううっ やっぱり優しいんだ...。
か、感動だよお。
でも、相変わらず全身はばっくんばっくんいってますけど。