あなたのいない暗闇を、光輝く世界に変えて
私の美知さんとの会話で目を覚ました哲平が、身支度を整えて部屋に戻って来た。

「知典…見つかったのか…。凛花、大丈夫か?」

「…うん、何とかね」

哲平も…ショックだろうし…辛いよね…


「凛花…あのさ…昨日のことだけど…」

頭を掻きながら言いづらそうに話し出したから、冷静に私から提起した。

「哲平は覚えてるの?」

「えっ」

そんな私に哲平は驚いた様子だったが、昨日の事を話してくれた。

「…あぁ、覚えてる。知典がいたのもわかってる。だから、俺自身が凛花を抱いたっていう感覚はないんだ」

「そう…なの…?」

「あぁ…本当に妙な感覚。俺の身体だけど知典だったし、知典が俺に話しかけてくることもあったし」

「そうなんだ…」

「あぁ。……知典、俺に凛花を守れってさ」

「え?」

「知典は俺の事、何でもお見通しだからな」

「どういうこと?」

「俺さ、ずっと凛花のこと好きだったんだぜ?」

「え?嘘だぁ。過去に彼女だっていたじゃない」

「そりゃあな、凛花は知典と付き合ってるし。だから誰にも言わずに、ただ好きでいただけなんだけど、知典にはバレてたみたいだな」

「………」

「昨日…知典が最後に言ってただろ?俺に凛花を頼んだぞ、って。きっと凛花をずっと好きで見ていた俺だから、知典の大事な凛花を、俺に託したんだと思う」

「………」

「でもさ、アイツらしいよな、俺に凛花を貸す、ってさ。あっちに行ったら凛花を返さなきゃなんだと。全く勝手だよな」
フッと哲平が笑った。

「そう言ってたね…うん」
ほんと、私を溺愛してくれてたトモらしい。

「それまではさ、俺が凛花の傍にいるから」

「ん?」

「凛花、結婚しよう」

「哲平…何いきなり…」

「もちろん、すぐの話じゃないし、知典を忘れて俺に惚れろとか、俺のものになれっていうんじゃないから」

「え?」

「そうだな…俺と凛花の結婚じゃなくて、言うなれば、知典と凛花と俺の結婚、だな」

「何?それは」

「俺は、知典を愛してる凛花が好きなんだ。知典を好きな凛花をまるっと愛して支えたい、ってこと」

でも…

「…哲平はそれでいいの?哲平一人を愛してくれる人の方がいいでしょ?」

「んー、それはどーかな。俺は知典も凛花も大事に思ってるし、今さら他の女を愛したいとも思わないし、他の女に愛されたいとも思わないかな」

「哲平…」

「だから俺の事は気にすんな。俺が結婚したいと思ってんだから。凛花さえよければ三人で結婚しよう。だから結婚指環は三つだからな!俺、仕事頑張って指環代稼ぐぜ」

「ん…うん…ありがと…」


正直、私一人では生きていけない気がしていた。

現在、両親も兄弟もいない私は天涯孤独で頼れる人がいない。

だから…甘えではあるけれど…強く優しく頼もしい哲平についていかせてもらえるのならありがたいと…思った。
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