【短編】最強総長は隠れ狼姫を惑わしたい。
「チッ……今回は引いてやるよ」
「でも三谷さんが黙ってねぇからな!」

 なんて捨て台詞を吐きながら彼らはいなくなった。

 良く分からないけれど……三谷って人のグループがあって、その人達は《氷龍》の総長であるこの迅と敵対してるっぽい?
 圭は《氷龍》がこの学校付近を取り仕切ってるって言っていたけれど、一枚岩ってわけじゃないみたい。

 取りこぼしもあるって言ってたもんね。

 組織図を把握しようとしていると、《氷龍》の総長である迅にジッと見られていることに気付いた。

 あ、そうだ。
 お礼言わなきゃないよね?


「えっと……来栖さん? 助けてくれてありがとうございます」

「……圭はどうした?」

「え?」

「お前についているように言っておいたはずだ。圭はどこに行った?」

 淡々と話す様子はあたしのお礼なんかどうでも良いって感じだ。
 別にあたしも関わりたいとは思ってないから良いんだけど……単純にムカつく。

「圭は彼女に会いに行きましたよ。ってか、一応お礼言ってるんだから『どういたしまして』とか言ったらどうですか?」

 質問に答えつつも不満をぶつけると、迅は驚いたように目を丸くした。
 そういう表情をすると少し可愛い感じもする。
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