【短編】最強総長は隠れ狼姫を惑わしたい。
「……助けられた側が言うセリフか?」
「……」

 まあ、感謝してるなら普通は言わないか。
 でもその感謝を無視されたらやっぱりいい気はしないと思うんだけど……。

「まあ、でも確かにそうだな。どういたしまして」
「う……はい……」

 年下相手でもそれが道理だと思ったら素直に従う姿勢に、あたしはそれ以上何も言えなくなる。

 なんていうか大人な対応……。


「それにしても、お前は俺に媚びないんだな?」
「へ? 媚び? は?」

 どういうことなのか分からなくて目をパチパチさせるあたしを迅は観察するようにジッと見下ろしてくる。

 何? 何なの?


「……そうだな、お前ならまあ良いか」

 何も分からないあたしを他所に、迅は何かを納得したように一つ頷いた。
 そしてあたしの目を真っ直ぐに見て告げる。

「男しかいない中にお前みたいな女一人とか、狼の群れに子羊を投げ入れるようなもんだ。俺の女になっとけ、守ってやる」

「は?」

 まるでそれが普通の事のように言われて理解が追いつかない。

 さっきまでの流れで守ってやるはまだ分かるとして、俺の女になっとけっていうのはどういう事だろう?
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