【短編】最強総長は隠れ狼姫を惑わしたい。
「……良いっすよ。直接見て、こいつならまあ大丈夫だと思ったんで」
「え?」
加藤先生が目をパチパチさせた後、拍子抜けしたような顔になる。
「日下部さん……君、どうやってこの女嫌いを口説いたんだ?」
「いや、口説いてはいないですよ?」
力が抜けたように笑いながら聞いてくる加藤先生に、あたしは否定の言葉で返す。
そんなあたしたちを他所に、迅は「こいつの荷物どこっすか?」と用件だけを口にした。
「ああ、こっちに置いてある」
そう言った加藤先生は、今朝先生と話していた応接テーブルのある一角に向かう。
その隅の方に置いてあった大き目のバッグをあたしが手に取るより先に、迅が持ち上げる。
「え?」
「荷物、これで全部か?」
「う、うん。……自分で持つよ?」
「いいから」
「……」
なにそれ。
中身もイケメン過ぎない?
と言うか、女嫌いのわりに女の扱い上手過ぎない?
不覚にもちょっとキュンとしてしまった。
「じゃあ、案内とか寮の説明とかも任せて良いか?」
「はい」
加藤先生の頼みに迅は短く返事をしてスタスタと職員室を出た。
あたしも早足で付いて行き職員室を出ると、「失礼しました」と言ってからドアを閉めてくれる。
その後は何も言わずに歩き出したけれど、歩調を合わせてくれているのかあたしは早歩きせずに済んだ。
やっぱり女の扱い上手いんじゃない?
言葉は少ないけど優しいし。
本当に女嫌いなの?
疑問が浮かぶけれど、それ以上に興味が湧いた。
暴走族の総長とかしてるわりに案外礼儀正しいし、女にも優しい。
この来栖迅という男はどんな人間なんだろうって。
……この時点で、きっともうあたしはこの男にハマっていたのかもしれない。
後になってから、そう思った。
「え?」
加藤先生が目をパチパチさせた後、拍子抜けしたような顔になる。
「日下部さん……君、どうやってこの女嫌いを口説いたんだ?」
「いや、口説いてはいないですよ?」
力が抜けたように笑いながら聞いてくる加藤先生に、あたしは否定の言葉で返す。
そんなあたしたちを他所に、迅は「こいつの荷物どこっすか?」と用件だけを口にした。
「ああ、こっちに置いてある」
そう言った加藤先生は、今朝先生と話していた応接テーブルのある一角に向かう。
その隅の方に置いてあった大き目のバッグをあたしが手に取るより先に、迅が持ち上げる。
「え?」
「荷物、これで全部か?」
「う、うん。……自分で持つよ?」
「いいから」
「……」
なにそれ。
中身もイケメン過ぎない?
と言うか、女嫌いのわりに女の扱い上手過ぎない?
不覚にもちょっとキュンとしてしまった。
「じゃあ、案内とか寮の説明とかも任せて良いか?」
「はい」
加藤先生の頼みに迅は短く返事をしてスタスタと職員室を出た。
あたしも早足で付いて行き職員室を出ると、「失礼しました」と言ってからドアを閉めてくれる。
その後は何も言わずに歩き出したけれど、歩調を合わせてくれているのかあたしは早歩きせずに済んだ。
やっぱり女の扱い上手いんじゃない?
言葉は少ないけど優しいし。
本当に女嫌いなの?
疑問が浮かぶけれど、それ以上に興味が湧いた。
暴走族の総長とかしてるわりに案外礼儀正しいし、女にも優しい。
この来栖迅という男はどんな人間なんだろうって。
……この時点で、きっともうあたしはこの男にハマっていたのかもしれない。
後になってから、そう思った。