【短編】最強総長は隠れ狼姫を惑わしたい。
「リィナに優しいのは……」

 そこで一度言葉を止めた迅は、少し考えているのか黙り込んだ。
 アスファルトを見つめながら答えを待っていると、「そうだな」と納得したような声が発せられる。

「多分、妹みたいに思ってるからだろうな」
「……妹……?」

 繰り返すように呟いて、何故か落胆する。

「ああ、妹はリィナより一つ下だけどな。お前の気安い感じが妹相手のときと似てるんだよ」

 だからだろうな、と優しく笑う迅は、本当に妹とあたしを重ねているみたいだった。


「……そっか、妹かぁ……うん、納得」

 優しくしてくれる理由が分かって、ストンと腑に落ちる。

 身内扱いなら、女嫌いの迅が優しいのも納得だ。


 ……納得、なのに。
 どうしてスッキリしない上にモヤモヤした気分になるんだろう?

 初めての気持ちに、自分に何が起こっているのか分からなかった。
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