【短編】最強総長は隠れ狼姫を惑わしたい。
4.初めての×××
「さてと、始めますか!」

 寮の自室に帰って来たあたしは、買ってきたものを一通り整理し終えると気合を入れた。

 目の前にはIHクッキングヒーターとフライパン。
 そしてボウルと菜箸と卵だ。

 そう、あたしは今から夕飯の卵焼きを作る。
 目玉焼きでもスクランブルエッグでもない、クルクルと巻く卵焼きだ。

 初めて作るけれど、大丈夫だよね?

 実はあたし、まともに料理したことが無い。
 目玉焼きは作ったことがあるけれど、黄身が破けたから正直目玉焼きと言って良いのかは分からない。

 でもはじめから卵を溶いておく卵焼きなら逆に出来るんじゃないかと思うの!
 失敗してもスクランブルエッグにはなるだろうし!

 そんなわけで、初めての卵焼きを作るためにあたしは卵を割り始めた。


 ………………そして。

「うわっとっとぉ⁉ きゃあぁあ⁉」

 数分後、悲鳴を上げることとなった。

「ううっ……なんでこんなことに……」

 目の前と自分の惨状に泣き言を漏らしてしまう。

 どうしようと途方に暮れていると、ピンポーンとインターホンの音が鳴った。


『おい、どうしたリィナ⁉ 何があった⁉』

 ドア越しに迅の焦りを含んだ声がする。
 心配してきてくれたらしい。
< 29 / 56 >

この作品をシェア

pagetop