【短編】最強総長は隠れ狼姫を惑わしたい。
 仮じゃなかったの?
 妹みたいって言ったよね?
 キス、良いって言ってないよ?

 疑問ばかりが浮かんでどれを聞けばいいのか分からない。

 そうしているうちに、迅の目がまたあたしを真っ直ぐに見た。
 怖いくらい真剣な目をしている。


「お前のこと、妹みたいだって言ったこと取り消すよ」
「え……?」
「妹なんかじゃない。一人の女として見てる」
「そ、れって……」

 熱を持つ彼の目に当てられたのか。
 それとも一人の女として見られてることに緊張しているのか。

 胸の鼓動がどんどん速まっていくのを感じた。

「はじめは、ただ他の女とは違うなって思った。そのうち妹みたいに放っとけないなって思って……でも違った。いつの間にか、女として見てたんだ」

 それを今日実感したんだ、と話してくれる。

「私服姿のリィナを見て、可愛いと思った。どうして優しいのかって聞かれて、妹みたいだと思っていたはずなのにすぐに出てこなかった」

 あ、もしかして考えるそぶりをしていたのはそれで?

「それでも俺が女を好きになるとは思えなかったから、妹みたいだと思おうとしていたのに……」

 そこまで言って軽く細まった迅の目に、明らかに男としての欲の炎が現れる。
 思わずゴクリと喉を鳴らして次の言葉を待った。
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