【短編】最強総長は隠れ狼姫を惑わしたい。
「……こいつが迅の女か……? ふん、なかなかいいんじゃねぇ?」

 値踏みするような視線に、久しぶりにイラッとする。

 睨み返そうと目に力を入れるつもりだったけれど、その前に圭があたしを守るように間に入った。


「なんの用ですか? 三谷さん」

 三谷?
 ああ、もしかしてコイツが《氷龍》と敵対してるっぽいグループのアタマ?

 そういえば入学式の日にそんな名前を聞いたな、と思い出した。


「用? そんなの決まってんだろ。あのいけ好かない迅の弱みを突いてやろうと思ってな」

「っ! リィナには手を出させませんよ?」

「口だけは達者だな? お前程度じゃあ俺には勝てねぇよ」


 どうやら狙いはあたしらしい。

 弱みを突く、という事はあたしを人質にでもするつもりなんだろうか?


「勝てなくても、逃げるくらいは出来るんじゃないっすか? ね!」

 圭は不意を突こうとしたのか、言い終わらないうちに動き出す。

 腰を低くして突進するように三谷へと向かって行った。

 ――でも。


「甘ぇんだよ!」

 反射神経が良いのか、三谷はすぐに反応して圭を押さえつけてしまう。

 上から押すように圭の両肩を掴み、そのまま腹に膝蹴りを食らわしていた。
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