【短編】最強総長は隠れ狼姫を惑わしたい。
「ぅぐっ!」

「圭⁉」

 今のはかなりイイところに入ったかもしれない。

 心配して駆け寄ろうとしたけれど、他の男に二の腕を掴まれてしまった。


「ほい、つーかまーえた」
「なっ⁉ 離してよ!」
「離すわけねーだろ?」

 軽い調子で言われたけれど、掴む手の力は強くて引っ張っただけじゃあ抜けそうにない。

 でもそうしている間にも圭は何度も三谷に蹴られていた。

「チビが粋がってんじゃねぇよ!」
「ぐっぐあっ!」
「やめてぇ!」

 叫ぶけれど、それで三谷が止めてくれるわけがない。

 ダメだ、助けなきゃ。

 強いことを知られたくない。
 でも友達が痛めつけられているのに行動しないなんて無理だ。

 とにかく掴まれている腕を外さないと。


 あたしは足を上げて(かかと)で男の足の甲を思い切り踏みつけた。

「うぎゃっ!」

 痛みで手が緩んだ隙に、ひねりを加えながら外す。

 そしてすぐに圭の所へ向かったんだけれど……。


「圭!」

「おっと、お前はこっちだよ」

 やっぱり反射神経がいいのか、圭を蹴っていた三谷が瞬時に立ち位置を変えてあたしの肩を掴む。
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