【短編】最強総長は隠れ狼姫を惑わしたい。
「え……? じゃああたし、どこに泊まれば……?」

 呆然としたあたしの呟きに、加藤先生は告げる。

「まあ、男子寮に寝泊まりするしかないんだが……一番安全だと思われる部屋の隣室の生徒がな、絶対に嫌だと言っていて……」

「えー……?」

 何なのその人? まあ、寝込みを襲おうとかしてくることはなさそうだけど……。
 あ、だから一番安全だと思われてるのか。


「とにかくそういうわけで、君の部屋がまだ決まっていないんだ」

「ええぇー……」

 もはや怒る気力もなくて、一文字で不満を表すことしか出来ない。

「昼までには何とか決めておくから、昼食を終えたら荷物を取りに一度職員室に来てくれ」

 眉をハの字にして頼み込んでくる加藤先生に、あたしは「はい」としか返せなかった。

***

 男、男、男。

 見渡す限り男ばかり。

 本当に女の子がいない。

 そして唯一の女生徒であるあたしへの注目がハンパない。


「おお! 女だ!」
「しかも結構可愛いんじゃねぇ?」
「だよな! 美人寄りの可愛い系って感じ」

 でも可愛いと言われるのは悪くない気分だった。
 今までそんなこと言われたことなかったし。

 ……ちょっと気恥ずかしいけどね。
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