【短編】最強総長は隠れ狼姫を惑わしたい。
 でもあたしって大人しくしてると可愛かったんだ……。

 これなら目標のカッコイイ男子と恋愛っていうのも案外すぐ出来るかもしれない。


 と、入学式を終えた教室で加藤先生が来るまでの隙間時間に一人ぼっちで考えていた。

 ……でもやっぱり女友達欲しいよぉ!
 珍獣扱いされるだけで話し相手がいないのはちょっと辛い。

 なんて思っていると。

「ねぇねぇ、君名前なんていうの?」

 タイミングが良いのか悪いのか、丁度声を掛けてくる男子がいた。

 自己紹介もまだだから名前を聞かれるのは分かるけれど……。

 ナンパだったらお断り、と思いながら声の方を見て驚く。

 だって、そこには女子のあたしより可愛いんじゃないかっていうほど可愛い顔をした男子がいたんだもの。


「俺は湯谷(ゆたに)(けい)。気軽に圭って呼んでくれよ」

 ニッコリ笑う圭はもはや天使だった。
 薄い色の茶髪は光が当たると金髪にも見えるし、好奇心旺盛そうな大きな目は愛嬌たっぷり。

 か、可愛すぎる!

「あ、あたしは日下部莉奈。リィナって呼んで? 中学ではみんなにそう呼ばれてたから」

「へぇー。良い呼び方だな。同じクラスだし、これからもよろしくな、リィナ」

「うん、こちらこそよろしく」

 可愛い女友達は無理だったけれど、可愛い男友達が出来た。

 不安もあったけれど幸先良いかも知れない、と思えた瞬間だった。
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