乳房星(たらちねぼし)〜再出発版
【私は泣いています】
またところ変わって、JR伊予北条駅のすぐ近くにある小さなアパートの一室にて…
2月中旬頃にがんセンターから逃げ出したゆりこは、松山市と伊予市松前町《いよしまさき》などの中予地域で暮らしている友人知人宅を転々として暮らしていた。
この部屋には、7日前にやって来た。
この部屋には、ゆりこの短大時代の友人が暮らしていた。
ゆりこと友人は、コーヒーをのみながら身の上話をしていた。
友人は、ゆりこに対して心配げな声で『今のままでいいの?』と言うた。
「ゆりこちゃん…ゆりこちゃんはこの先どうしたいのよ?」
「どうしたいって…」
「2月中旬にがんセンターから逃げ出したあと、あちらこちらを逃げ回っていたよね…ゆりこちゃんは逃げ回る暮らしを続けていくの?」
ゆりこは、悲しげな声で友人に言うた。
「仕方ないわよ…ゆりこ…行くところがないもん…帰るところもないもん…親もきょうだいも身内も…いないもん…」
「だったら、波止浜に帰ったらいいじゃん。」
「(ひねた声で)居場所がなくなったから帰れない!!」
「それじゃあ、乳がんの治療はどうするのよ?」
「おっぱい片方をなくすのはイヤだから拒否した!!」
「拒否したって…」
「ゆりこ…このまま死ぬと決めたもん…生きてやり直しなんかできん!!…くすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすん…くすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすん…」
ゆりこは、友人の前でくすんくすんと泣きながら言うた。
「ゆりこ…しんどい…ゆりこ…しんどい…くすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすん…くすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすん…今の状態でやり直せなんて無理!!…くすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすん…くすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすん…」
友人は、ものすごく困った声でゆりこに言うた。
「ゆりこちゃんの気持ちはよく分かったわ…だけど、その前にひとつだけしなければならないことがあるんじゃないの?」
友人の問いに対して、ゆりこは首を横にふって答えた。
友人は、心配げな声でゆりこに言うた。
「ないって…どう言うことよ?」
ゆりこは、ひねた声で言うた。
「23年前(1995年)のあの時のことは言わないでよ!!…あれはよーくんが100パーセント悪いのよ!!…ゆりこは悪くないもん!!」
友人は、あきれた声でゆりこに言うた。
「なんでよーくんが100パーセント悪いのよ?」
ゆりこは、ものすごくひねた声で友人に言うた。
「ゆりこと健太くんの結婚にけちつけたからよーくんを殴った!!殴られたよーくんが100パーセント悪い!!」
友人は、ものすごくあきれた声でゆりこに言うた。
「殴られたよーくんが100パーセント悪いなんて…それじゃあ、ゆりこちゃんはセートーボーエーだから100パーセント正しいという事なの!?」
ゆりこは、ものすごく怒った声で友人に言うた。
「ゆりこは悪くないもん!!殴られたよーくんが100パーセント悪い!!」
友人は、ものすごくあきれた声でゆりこに言うた。
「ゆりこちゃんはダメね…ゆりこちゃんはお嫁に行く資格がなかったのよ…ムコハンもらう資格もなかったのよ…23年前のあの時、うちらはゆりこちゃんになんて言うたと思う?」
友人は、ものすごく怒った声でゆりこに言うた。
「うちは、ゆりこちゃんに『(時期を)少しだけ遅らせたら?』と言うたのよ!!」
「少しってどれくらいよ!?」
「だから、『少しだけ』と言うたのよ!!」
「少しってどれくらいよ!?」
「だから『少しだけ』と言うたのよ!!」
「ますますはぐいたらしいわね!!あんたが言う少しとはどれくらいよ!?」
友人が抽象的《ものすごくあいまい》な表現で言うたので、ゆりこはよりし烈な怒りを込めて友人に言い返した。
友人は、ものすごくつらい声でゆりこに言うた。
「うちは、ゆりこちゃんに10年も20年も延期してとは言うてないのよ…3〜4年の間だけ延期してと言うたのよ…」
「なんでそんなことを言うたのよ!?」
「だから、ゆとりを作ってと…」
「ますますはぐいたらしいわね!!あんたが言うゆとりとはなんなのよ!!よくもゆりこにいちゃもんつけたわね!!一生うらんでやる!!」
友人は、ぐすんぐすんと泣きながら言うた。
「ゆりこちゃんは、うちが言うた言葉に不満があるのね…ぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすん…そう言うたうちも大失敗したわ…ゆとりを持ちすぎたことが原因で…大失敗した…うちは…39歳で結婚したけど…大失敗した〜…ぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすん…ダンナは…55歳でうちと結婚して大失敗したと言うた…婚姻届にはんを捺《お》して市役所に提出した翌日に離婚届を出した…ぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすん…」
ゆりこは、冷めた目つきで友人を見つめたあと部屋から出て行った。
このあと、ゆりこはとてつもない暴挙《ぼうきょ》に出てしまったようだ。
2月中旬頃にがんセンターから逃げ出したゆりこは、松山市と伊予市松前町《いよしまさき》などの中予地域で暮らしている友人知人宅を転々として暮らしていた。
この部屋には、7日前にやって来た。
この部屋には、ゆりこの短大時代の友人が暮らしていた。
ゆりこと友人は、コーヒーをのみながら身の上話をしていた。
友人は、ゆりこに対して心配げな声で『今のままでいいの?』と言うた。
「ゆりこちゃん…ゆりこちゃんはこの先どうしたいのよ?」
「どうしたいって…」
「2月中旬にがんセンターから逃げ出したあと、あちらこちらを逃げ回っていたよね…ゆりこちゃんは逃げ回る暮らしを続けていくの?」
ゆりこは、悲しげな声で友人に言うた。
「仕方ないわよ…ゆりこ…行くところがないもん…帰るところもないもん…親もきょうだいも身内も…いないもん…」
「だったら、波止浜に帰ったらいいじゃん。」
「(ひねた声で)居場所がなくなったから帰れない!!」
「それじゃあ、乳がんの治療はどうするのよ?」
「おっぱい片方をなくすのはイヤだから拒否した!!」
「拒否したって…」
「ゆりこ…このまま死ぬと決めたもん…生きてやり直しなんかできん!!…くすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすん…くすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすん…」
ゆりこは、友人の前でくすんくすんと泣きながら言うた。
「ゆりこ…しんどい…ゆりこ…しんどい…くすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすん…くすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすん…今の状態でやり直せなんて無理!!…くすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすん…くすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすん…」
友人は、ものすごく困った声でゆりこに言うた。
「ゆりこちゃんの気持ちはよく分かったわ…だけど、その前にひとつだけしなければならないことがあるんじゃないの?」
友人の問いに対して、ゆりこは首を横にふって答えた。
友人は、心配げな声でゆりこに言うた。
「ないって…どう言うことよ?」
ゆりこは、ひねた声で言うた。
「23年前(1995年)のあの時のことは言わないでよ!!…あれはよーくんが100パーセント悪いのよ!!…ゆりこは悪くないもん!!」
友人は、あきれた声でゆりこに言うた。
「なんでよーくんが100パーセント悪いのよ?」
ゆりこは、ものすごくひねた声で友人に言うた。
「ゆりこと健太くんの結婚にけちつけたからよーくんを殴った!!殴られたよーくんが100パーセント悪い!!」
友人は、ものすごくあきれた声でゆりこに言うた。
「殴られたよーくんが100パーセント悪いなんて…それじゃあ、ゆりこちゃんはセートーボーエーだから100パーセント正しいという事なの!?」
ゆりこは、ものすごく怒った声で友人に言うた。
「ゆりこは悪くないもん!!殴られたよーくんが100パーセント悪い!!」
友人は、ものすごくあきれた声でゆりこに言うた。
「ゆりこちゃんはダメね…ゆりこちゃんはお嫁に行く資格がなかったのよ…ムコハンもらう資格もなかったのよ…23年前のあの時、うちらはゆりこちゃんになんて言うたと思う?」
友人は、ものすごく怒った声でゆりこに言うた。
「うちは、ゆりこちゃんに『(時期を)少しだけ遅らせたら?』と言うたのよ!!」
「少しってどれくらいよ!?」
「だから、『少しだけ』と言うたのよ!!」
「少しってどれくらいよ!?」
「だから『少しだけ』と言うたのよ!!」
「ますますはぐいたらしいわね!!あんたが言う少しとはどれくらいよ!?」
友人が抽象的《ものすごくあいまい》な表現で言うたので、ゆりこはよりし烈な怒りを込めて友人に言い返した。
友人は、ものすごくつらい声でゆりこに言うた。
「うちは、ゆりこちゃんに10年も20年も延期してとは言うてないのよ…3〜4年の間だけ延期してと言うたのよ…」
「なんでそんなことを言うたのよ!?」
「だから、ゆとりを作ってと…」
「ますますはぐいたらしいわね!!あんたが言うゆとりとはなんなのよ!!よくもゆりこにいちゃもんつけたわね!!一生うらんでやる!!」
友人は、ぐすんぐすんと泣きながら言うた。
「ゆりこちゃんは、うちが言うた言葉に不満があるのね…ぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすん…そう言うたうちも大失敗したわ…ゆとりを持ちすぎたことが原因で…大失敗した…うちは…39歳で結婚したけど…大失敗した〜…ぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすん…ダンナは…55歳でうちと結婚して大失敗したと言うた…婚姻届にはんを捺《お》して市役所に提出した翌日に離婚届を出した…ぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすん…」
ゆりこは、冷めた目つきで友人を見つめたあと部屋から出て行った。
このあと、ゆりこはとてつもない暴挙《ぼうきょ》に出てしまったようだ。