乳房星(たらちねぼし)〜再出発版
【ノラ】
時は、午後1時過ぎであった。
またところ変わって、大阪西成《あいりんちく》にある公園にて…
職探しを断念した私は、また釜ヶ崎《ここ》へ戻って来た。
私は、炊き出しの順番待ちをしている住人《おっちゃん》たちの列に並んでいた。
そんな時であった。
私のもとに、うすいブルーの背広姿で黒フチメガネをかけている男性がやって来た。
黒フチメガネの男性は、おどけた声で私に言うた。
「あの〜」
「はい?」
「コリントイワマツヨシタカグラマシーさまでございますか?」
「はい。」
「私、尾儀原健太が短大《メータン》に在籍していた時に同じサークルにいました…紺原《こんばら》ともうします。」
「はあ〜」
男性は、ものすごくあせった声で私に言うた。
「あの〜」
「はい?」
「私…健太くんを探して大阪《ここ》へ来たのです。」
「えっ?」
「あの〜…」
「なんでしょうか?」
「健太くんをここで見かけましたか?」
「えっ?見てまへんけど。」
「(残念な声で言う)そうですか…見てまへんか…」
男性は、ものすごく困った声で私に言うた。
「あの〜、もし健太くんを見かけたらここへ知らせてください…頼んます…」
男性は、私に名刺を差し出した。
名刺を受け取った私は、男性に言うた。
「ちょっとおうかがいしますけど…健太はどななトラブルを起こしたのでしょうか?」
男性は、ものすごくあつかましい声で私に言うた。
「健太は、私立高校《メートク》にいた時にアクギョウザンマイをしていたのですよ!!」
「アクギョウザンマイ?」
「そうですよ!!」
「たとえば?」
「チコクハヤベンシューバンをサボる…自由と権利ばかりを主張する…オレ、メートクにいた時に健太からきついいじめを受けた!!…だから、八つ裂きにしたるんや!!」
私は、コンワクした声で男性に言うた。
「それはどう言うことでおますか?」
私の問いに対して、男性はよりし烈な怒りを込めて答えた。
「健太のヤローは、オレの弁当を食べあさった…シューバンは、健太のところに来た時からしよらん生徒がいた…お昼のお茶を取ってくるのも、黒板を消すのも…ぜーんぶオレに押しつけた…健太のヤローは寮で暮らしていたけど、寮のキヤクを破ってうちへ遊びに来てファミコンしよった…寮に帰らずにうちに居続けるなど、悪いことをたーんとしよった!!…健太のヤローは、(母子保護)施設でうんとかわいがられていたからあななクソガキになったんや!!」
「あの〜、他にはどななことがあったのですか?」
「ああ!!思い出したワ!!」
「えっ?」
「健太のクソガキは、ぼくのあこがれの女の子をドロボーした!!」
「えっ?ソレホンマでっか?」
「ホンマにホンマにホンマにホンマにホンマにホンマにホンマにホンマにホンマにホンマにホンマにホンマにホンマにホンマや!!」
ものすごく怒った声で叫んだ男性は、私にこう言うた。
「健太のクソガキは、女ひっかけることとズル休みすることはいっちょまえなんですよ!!…ぼくは一生懸命になって勉学にはげんでいたのに…」
「それじゃあ、サークルはなんで入ったのですか?」
「健太のクソガキがオレをゴーインに押し込めた…『一生一度しかない時間がもったいない…』と言うて、むりやりオレを連れて行った…だからこらえへん!!」
「あの〜」
「イワマツさん、もし健太《クソバカ》を見かけたらオレに知らせてください!!」
「はあ〜分かりました…あの〜」
「オレ、これから知人の家に行きます…」
「知人の家?」
「ええ…知人に頼んで、知人の知人のそのまた知人に健太《クソバカ》の始末を頼みに行きます…ほな、しゃいなら…」
男性は、私にこう言うたあと急いで走って行った。
私は、ボーゼンとした表情で男性の背中を見つめた。
そして、その夜おそくであった。
またところ変わって、大阪ミナミの道頓堀川沿いの地区にて…
ショルダーバッグを持って歩いている私は、戎橋《えびすばし》を渡ったあと歩行者専用道路を通って相合橋《あいおいばし》へ向かった。
通りにある店の看板の灯りとネオンサインがきらめく通りに、たくさんの人たちが往来していた。
通りのスピーカーから、木下結子さんの歌で『ノラ』が流れていた。
私は、相合橋《あいおいばし》を渡って再び宗右衛門町《そうえもんちょう》へ向かった。
相合橋《あいおいばし》を渡ってから数十分後であった。
私はこの時、人通りがいない露地《ろじ》に迷い込んでしまった。
たしか、水掛け地蔵さんがある法善寺横丁《ほうぜんじよこちょう》なのか…
よくおぼえてへんけど、ものすごくさびしい場所だったと思う。
アメリカニューヨークのセントラルパークの97St以北のエリアやロスアンゼルスのダウンタウンの一部の地域やブラジル・リオデジャネイロの郊外にあったファベーラ(スラム街)…を思い出した。
考えただけでも、ゾッとする…
そんな時であった。
私がいる場所から200メートル先の露地《ろじ》でなさけない男の声と男の怒鳴り声が響いたのを聞いた。
私は、現場の100メートル手前まで接近したあと身をひそめた。
現場にいたのは、健太と溝端屋のダンナと番頭《ばんと》はんと田嶋組長と小林と山岡とヤクザの男たち20人がいた。
健太は、溝端屋のダンナに泣きそうな声で許しごいをしていた。
「この通り頼んます…お願いです…よーくんがどこへ行ったのか教えてください…」
健太は、溝端屋のダンナの前で土下座をしながら私に会いたいと言うた。
「立てやコラ!!」
この時、近くにいたヤクザの男たち数人が健太をボコボコにいて回した。
ヤクザの男たちからボコボコにいて回された健太は、溝端屋のダンナの前に倒れた。
溝端屋のダンナは、健太のエリクビをつかんで起こしたあと、怒った声で言うた。
「コラ!!」
「なんやねん…」
「オドレはさっきワシになんて言うた!?」
「よーくんにわびたいんだよ…」
「オドレふざけとんか!?」
(ガーン!!)
溝端屋のダンナは、グーで健太のこめかみを殴った。
溝端屋のダンナにこめかみを殴られた健太は、小林の前に倒れた。
小林は、健太のエリクビをつかんで起こしたあと怒った声で言うた。
「コラ!!クソガキャ!!」
「なんやねん…」
「よーくんにわびる前に、わしらにわびを入れろ!!」
「だから、なにをわびろと言うねん…」
「田嶋《くみちょう》の娘《むすめ》を刃物で刺して殺したのはオドレか!?」
「違います〜グワ!!」
(ドカッ!!)
ブチ切れた小林は、健太の腹部をグーで殴りつけた。
「ゲホゲホゲホゲホゲホゲホゲホゲホゲホゲホゲホゲホゲホゲホゲホゲホゲホゲホ…」
近くにいた番頭《ばんと》はんは、不気味な声で健太に言うた。
「あんさん、ていこうするのはそのくらいでやめときよ…あんさんの女グセが悪いことはみんな知ってはるんですよ~」
健太は、ゲホゲホ言いながら言うた。
「知らねえよ…オレが田嶋《くみちょう》の娘を殺した証拠はあんのかよ〜」
小林は、健太に対して『あるからいよんやボケ!!』と怒鳴りつけたあと、右足で健太をけとばした。
「ゲホゲホゲホゲホゲホゲホゲホゲホゲホゲホゲホゲホ…」
小林は、地べたに倒れた健太の背中を右足でふみつけながら言うた。
「オドレクソガキャ!!」
「なんやねん…」
「なんで田嶋《くみちょう》の娘を殺した!?」
「殺してないよ…あのときは…田嶋《たじま》の構成員を殺すつもりだった…あの構成員《クソチンピラ》にやられたから仕返しするつもりでいた…せやけど…田嶋《くみちょう》の娘が構成員《クソチンピラ》をかばった!!…オドレら!!オレをボコボコに度付き回したらどないなるかわかっとんか!?ワーッ!!」
起き上がった健太は、よりし烈な怒りを込めて小林をかたいもので殴りつけた。
つづいて、健太は田嶋《くみちょう》の肩をかたい棒で激しく殴りつけた。
「グワ〜」
「組長。」
山岡は、健太にかたいもので殴られた田嶋《くみちょう》を起こした。
「大丈夫でおますか?」
「ゲホゲホ…」
健太は、溝端屋のダンナに対して『ざまーみろクソボケ虫ケラ!!』と言いながらおしりペンペンして逃げようとした。
番頭《ばんと》はんは、不気味な声で健太に言うた。
「そんなことして逃げたらどないなるか分かってますか?」
健太は、いばった声で『フン、こわくないわ…あばよ…ボケ…』と言うて立ち去った。
しかし、健太はそこから数百メートル先でヨレヨレの状態になってしまった。
ブチ切れた小林は、震える声で言うた。
「あのクソガキャ…ふざけとんか!?」
番頭《ばんと》はんは、小林に『やめろ!!』と言うてなだめた。
溝端屋のダンナは、怒った声で言うた。
「まあええわ…尾儀原《あのクソガキ》は、自分がおかしたあやまちがゼンゼンわかってへんみたいや…こないなったら、尾儀原《クソガキ》のガールフレンドにオトシマエつけてもらうことにしよう…尾儀原《クソガキ》は、ゆりこと結婚したらしいな…ほんなら、ゆりこにオトシマエをつけてもらうことにしよう…」
「それでもアカンかったらどないしまっか?」
「その時は、施設長にオトシマエをつけてもらうことにしよう…わしらに対していちゃもんつけたので、母子保護施設《あのしせつ》はもうすぐ終《しま》いだ。」
腕組みをしている溝端屋のダンナは、番頭《ばんと》はんたちに対して『母子保護施設をつぶすぞ!!』と言うた。
健太は、とんでもないあやまちを犯した…
田嶋《くみ》にケンカをしかけたらどないなるんかわかっとんか…
身をひそめている私は、ショルダーバッグを抱きかかえた状態でゆっくりと現場から離れた。
露地裏から出たあと、私は人通りの多い通りを通って南海なんば駅方面へ向かって歩いた。
もうイヤや…
日本《こななくに》にいたくない…
明日の朝、ニュウカンへ行こう…
一刻も早く、日本《ここ》から出国しよう…
またところ変わって、大阪西成《あいりんちく》にある公園にて…
職探しを断念した私は、また釜ヶ崎《ここ》へ戻って来た。
私は、炊き出しの順番待ちをしている住人《おっちゃん》たちの列に並んでいた。
そんな時であった。
私のもとに、うすいブルーの背広姿で黒フチメガネをかけている男性がやって来た。
黒フチメガネの男性は、おどけた声で私に言うた。
「あの〜」
「はい?」
「コリントイワマツヨシタカグラマシーさまでございますか?」
「はい。」
「私、尾儀原健太が短大《メータン》に在籍していた時に同じサークルにいました…紺原《こんばら》ともうします。」
「はあ〜」
男性は、ものすごくあせった声で私に言うた。
「あの〜」
「はい?」
「私…健太くんを探して大阪《ここ》へ来たのです。」
「えっ?」
「あの〜…」
「なんでしょうか?」
「健太くんをここで見かけましたか?」
「えっ?見てまへんけど。」
「(残念な声で言う)そうですか…見てまへんか…」
男性は、ものすごく困った声で私に言うた。
「あの〜、もし健太くんを見かけたらここへ知らせてください…頼んます…」
男性は、私に名刺を差し出した。
名刺を受け取った私は、男性に言うた。
「ちょっとおうかがいしますけど…健太はどななトラブルを起こしたのでしょうか?」
男性は、ものすごくあつかましい声で私に言うた。
「健太は、私立高校《メートク》にいた時にアクギョウザンマイをしていたのですよ!!」
「アクギョウザンマイ?」
「そうですよ!!」
「たとえば?」
「チコクハヤベンシューバンをサボる…自由と権利ばかりを主張する…オレ、メートクにいた時に健太からきついいじめを受けた!!…だから、八つ裂きにしたるんや!!」
私は、コンワクした声で男性に言うた。
「それはどう言うことでおますか?」
私の問いに対して、男性はよりし烈な怒りを込めて答えた。
「健太のヤローは、オレの弁当を食べあさった…シューバンは、健太のところに来た時からしよらん生徒がいた…お昼のお茶を取ってくるのも、黒板を消すのも…ぜーんぶオレに押しつけた…健太のヤローは寮で暮らしていたけど、寮のキヤクを破ってうちへ遊びに来てファミコンしよった…寮に帰らずにうちに居続けるなど、悪いことをたーんとしよった!!…健太のヤローは、(母子保護)施設でうんとかわいがられていたからあななクソガキになったんや!!」
「あの〜、他にはどななことがあったのですか?」
「ああ!!思い出したワ!!」
「えっ?」
「健太のクソガキは、ぼくのあこがれの女の子をドロボーした!!」
「えっ?ソレホンマでっか?」
「ホンマにホンマにホンマにホンマにホンマにホンマにホンマにホンマにホンマにホンマにホンマにホンマにホンマにホンマや!!」
ものすごく怒った声で叫んだ男性は、私にこう言うた。
「健太のクソガキは、女ひっかけることとズル休みすることはいっちょまえなんですよ!!…ぼくは一生懸命になって勉学にはげんでいたのに…」
「それじゃあ、サークルはなんで入ったのですか?」
「健太のクソガキがオレをゴーインに押し込めた…『一生一度しかない時間がもったいない…』と言うて、むりやりオレを連れて行った…だからこらえへん!!」
「あの〜」
「イワマツさん、もし健太《クソバカ》を見かけたらオレに知らせてください!!」
「はあ〜分かりました…あの〜」
「オレ、これから知人の家に行きます…」
「知人の家?」
「ええ…知人に頼んで、知人の知人のそのまた知人に健太《クソバカ》の始末を頼みに行きます…ほな、しゃいなら…」
男性は、私にこう言うたあと急いで走って行った。
私は、ボーゼンとした表情で男性の背中を見つめた。
そして、その夜おそくであった。
またところ変わって、大阪ミナミの道頓堀川沿いの地区にて…
ショルダーバッグを持って歩いている私は、戎橋《えびすばし》を渡ったあと歩行者専用道路を通って相合橋《あいおいばし》へ向かった。
通りにある店の看板の灯りとネオンサインがきらめく通りに、たくさんの人たちが往来していた。
通りのスピーカーから、木下結子さんの歌で『ノラ』が流れていた。
私は、相合橋《あいおいばし》を渡って再び宗右衛門町《そうえもんちょう》へ向かった。
相合橋《あいおいばし》を渡ってから数十分後であった。
私はこの時、人通りがいない露地《ろじ》に迷い込んでしまった。
たしか、水掛け地蔵さんがある法善寺横丁《ほうぜんじよこちょう》なのか…
よくおぼえてへんけど、ものすごくさびしい場所だったと思う。
アメリカニューヨークのセントラルパークの97St以北のエリアやロスアンゼルスのダウンタウンの一部の地域やブラジル・リオデジャネイロの郊外にあったファベーラ(スラム街)…を思い出した。
考えただけでも、ゾッとする…
そんな時であった。
私がいる場所から200メートル先の露地《ろじ》でなさけない男の声と男の怒鳴り声が響いたのを聞いた。
私は、現場の100メートル手前まで接近したあと身をひそめた。
現場にいたのは、健太と溝端屋のダンナと番頭《ばんと》はんと田嶋組長と小林と山岡とヤクザの男たち20人がいた。
健太は、溝端屋のダンナに泣きそうな声で許しごいをしていた。
「この通り頼んます…お願いです…よーくんがどこへ行ったのか教えてください…」
健太は、溝端屋のダンナの前で土下座をしながら私に会いたいと言うた。
「立てやコラ!!」
この時、近くにいたヤクザの男たち数人が健太をボコボコにいて回した。
ヤクザの男たちからボコボコにいて回された健太は、溝端屋のダンナの前に倒れた。
溝端屋のダンナは、健太のエリクビをつかんで起こしたあと、怒った声で言うた。
「コラ!!」
「なんやねん…」
「オドレはさっきワシになんて言うた!?」
「よーくんにわびたいんだよ…」
「オドレふざけとんか!?」
(ガーン!!)
溝端屋のダンナは、グーで健太のこめかみを殴った。
溝端屋のダンナにこめかみを殴られた健太は、小林の前に倒れた。
小林は、健太のエリクビをつかんで起こしたあと怒った声で言うた。
「コラ!!クソガキャ!!」
「なんやねん…」
「よーくんにわびる前に、わしらにわびを入れろ!!」
「だから、なにをわびろと言うねん…」
「田嶋《くみちょう》の娘《むすめ》を刃物で刺して殺したのはオドレか!?」
「違います〜グワ!!」
(ドカッ!!)
ブチ切れた小林は、健太の腹部をグーで殴りつけた。
「ゲホゲホゲホゲホゲホゲホゲホゲホゲホゲホゲホゲホゲホゲホゲホゲホゲホゲホ…」
近くにいた番頭《ばんと》はんは、不気味な声で健太に言うた。
「あんさん、ていこうするのはそのくらいでやめときよ…あんさんの女グセが悪いことはみんな知ってはるんですよ~」
健太は、ゲホゲホ言いながら言うた。
「知らねえよ…オレが田嶋《くみちょう》の娘を殺した証拠はあんのかよ〜」
小林は、健太に対して『あるからいよんやボケ!!』と怒鳴りつけたあと、右足で健太をけとばした。
「ゲホゲホゲホゲホゲホゲホゲホゲホゲホゲホゲホゲホ…」
小林は、地べたに倒れた健太の背中を右足でふみつけながら言うた。
「オドレクソガキャ!!」
「なんやねん…」
「なんで田嶋《くみちょう》の娘を殺した!?」
「殺してないよ…あのときは…田嶋《たじま》の構成員を殺すつもりだった…あの構成員《クソチンピラ》にやられたから仕返しするつもりでいた…せやけど…田嶋《くみちょう》の娘が構成員《クソチンピラ》をかばった!!…オドレら!!オレをボコボコに度付き回したらどないなるかわかっとんか!?ワーッ!!」
起き上がった健太は、よりし烈な怒りを込めて小林をかたいもので殴りつけた。
つづいて、健太は田嶋《くみちょう》の肩をかたい棒で激しく殴りつけた。
「グワ〜」
「組長。」
山岡は、健太にかたいもので殴られた田嶋《くみちょう》を起こした。
「大丈夫でおますか?」
「ゲホゲホ…」
健太は、溝端屋のダンナに対して『ざまーみろクソボケ虫ケラ!!』と言いながらおしりペンペンして逃げようとした。
番頭《ばんと》はんは、不気味な声で健太に言うた。
「そんなことして逃げたらどないなるか分かってますか?」
健太は、いばった声で『フン、こわくないわ…あばよ…ボケ…』と言うて立ち去った。
しかし、健太はそこから数百メートル先でヨレヨレの状態になってしまった。
ブチ切れた小林は、震える声で言うた。
「あのクソガキャ…ふざけとんか!?」
番頭《ばんと》はんは、小林に『やめろ!!』と言うてなだめた。
溝端屋のダンナは、怒った声で言うた。
「まあええわ…尾儀原《あのクソガキ》は、自分がおかしたあやまちがゼンゼンわかってへんみたいや…こないなったら、尾儀原《クソガキ》のガールフレンドにオトシマエつけてもらうことにしよう…尾儀原《クソガキ》は、ゆりこと結婚したらしいな…ほんなら、ゆりこにオトシマエをつけてもらうことにしよう…」
「それでもアカンかったらどないしまっか?」
「その時は、施設長にオトシマエをつけてもらうことにしよう…わしらに対していちゃもんつけたので、母子保護施設《あのしせつ》はもうすぐ終《しま》いだ。」
腕組みをしている溝端屋のダンナは、番頭《ばんと》はんたちに対して『母子保護施設をつぶすぞ!!』と言うた。
健太は、とんでもないあやまちを犯した…
田嶋《くみ》にケンカをしかけたらどないなるんかわかっとんか…
身をひそめている私は、ショルダーバッグを抱きかかえた状態でゆっくりと現場から離れた。
露地裏から出たあと、私は人通りの多い通りを通って南海なんば駅方面へ向かって歩いた。
もうイヤや…
日本《こななくに》にいたくない…
明日の朝、ニュウカンへ行こう…
一刻も早く、日本《ここ》から出国しよう…