乳房星(たらちねぼし)〜再出発版
【なみだ恋】
時は、6月3日の午後2時過ぎであった。
またところ変わって、JRと南海電車の和歌山市駅の北東寄りにある和歌山競輪場にて…
(ジャーン!!ジャーン!!ジャーン!!)
場内に、勝負開始をつげる鐘《ジャン》が鳴り響いた。
同時に、カラフルなユニフォームを着た9人の選手たちが自転車のペタルを加速させた。
観客席《スタンド》にいるお客さまたちが声をあげ始めた。
(ジャンジャンジャンジャンジャンジャンジャンジャンジャンジャンジャンジャンジャンジャンジャンジャンジャンジャンジャンジャンジャンジャンジャンジャンジャンジャンジャンジャン!!ワーッワーッワーッワーッワーッワーッワーッワーッワーッワーッワーッワーッワーッワーッワーッワーッワーッ!!ジャンジャンジャンジャンジャンジャンジャンジャンジャンジャンジャンジャンジャンジャンジャンジャンジャンジャンジャンジャンジャン!!)
鐘《ジャン》がより激しく鳴り響いたと同時に、観客席《スタンド》にいる観客たちがものすごく大きな叫び声をあげた。
9人の選手たちは、バンク上でし烈な闘いを繰り広げた。
ところ変わって、競輪場の入口付近にある広場にて…
私は、くまなく歩いて実松《さねまつ》どんを探していた。
5月30日に、実松《さねまつ》どんがらめんどいことをたのまれた私は、ものすごく怒り狂っていた。
実松《さねまつ》どんは、私にみどり色のガムテープが貼られた浅田飴《あさだあめ》のかんかんを預かってくれと頼んだあと、行方不明になった。
あのクソアホンダラ小僧は、どこへ逃げた!!
『2〜3日後に取りに行きます…』と言うたのに、取りに来ないとはどう言うことゾ!!
そんな中であった。
私は、広場で質屋《しちや》をしている番頭《ばんと》はんを見た。
ヤキソバヘアに黒のサングラスでももけた腹巻き姿の番頭《ばんと》はんは、競輪場へ来たおっちゃんたちが持ち込んだ金品を預かったあとカネを渡していた。
私が来た時、おっちゃんひとりがカネを返しに番頭《ばんと》はんのもとにやって来た。
番頭《ばんと》はんは、カネを受け取ったあとウォークマンをおっちゃんに渡した。
私は、ホクホクしているおっちゃんの背中《せな》をするどい目つきでにらみつけた。
この時、番頭《ばんと》はんが私に声をかけた。
「おう、コリント。」
「番頭《ばんと》はん。」
「コリント、こななところでなんしよんぞ?」
私は、困った声で番頭《ばんと》はんに言うた。
「なんしよんぞって、オレはゆかさんと小番頭《こばんと》はんを探して和歌山《ここ》まで来たんや。」
番頭《ばんと》はんは、あやしげな声で私に言うた。
「ああ、君波の次女《むすめ》を探しよったんか。」
「せや…オレ…先月の17日の夕方に門司港駅《もじのえき》でバナナのたたきうりのおっちゃんにおうた…同じ日に、ゆかさんが泉大津の港から阪九フェリーに乗って九州へ向かう予定だと聞いたけん…泉大津へ行こうとしたけど、南海電車《でんしゃ》がとまったけん行くことができんかった…」
「それは残念でしたねぇ〜」
「あと、小番頭《こばんと》はんも行方不明になってるさかいに、おんまく困っているんだよ。」
「磯村は、きまぐれな男だからあちらこちらをうろちょろしとるけん、見つけることは不可能でおます。」
「そうでおましたか…話し変わるけど、先月30日に萩の茶屋《あいりんちく》の公園で実松《さねまつ》どんが私にワケのわからん頼み事をしたあと、行方不明になった…アレ、どう言うこっちゃねん?」
私の問いに対して、番頭《ばんと》はんはヘーゼンとした声で答えた。
「ああ、実松《さねまつ》がコリントに会いに来たのですね。」
「番頭《ばんと》はん!!」
「なんやねん~」
「実松《さねまつ》どんは、頭がいかれとんとちゃいまっか!?」
「なにがですか?」
「なにがですかじゃなかろが!!」
「コリント、なんでそないに怒るねん?」
「怒りたくもなるワ!!浅田飴《あさだあめ》のかんかんに入っているアメ玉を2〜3日預かってくれと言うこと自体がおかしいねん!!」
番頭《ばんと》はんは、ヘラヘラした表情で私に言うた。
「コリント、すまんけどもうあと何日かアレ預かっといてくれる?」
「あと何日かって…そなな抽象的《あいまい》な言い方しないでください!!」
「分かってるよ〜」
「分かっているのであれば、はっきりと言うてください!!」
「だからはっきりと言うたよ〜」
「番頭《ばんと》はん!!人をおちょくるのもええかげんせえよ!!」
「分かってまんねん…せやけど、今はツゴーが悪いねん。」
「ますますはぐいたらしいのぉ〜!!いつまでオレはアレ(浅田飴《あさだあめ》のかんかん)を預からなアカンねん!!ツゴーが悪いと言うて逃げたらどないなるのか分かっとんか!?」
「コリント、そないに怒るなよ〜」
「ほなオレを怒らすな!!」
「コリントの気持ちはよぉ分かるさかいに…ワシは、1年も2年も預かってくれとはいよらんねん…もうあと7日でかまんけんアレ預かっといてくれる?」
「分かりました…7日後には取りに来てください!!」
番頭《ばんと》はんは、ヘラヘラした声で『へいへい』と言うた。
なんやねん一体もう…
番頭《ばんと》はんは、人をおちょくっとんか…
私は、ヘラヘラとしている番頭《ばんと》はんをにらみつけたあと競輪場から出ていった。
私ににらまれた番頭《ばんと》はんは、ヘラヘラした表情で商売をつづけた。
その日の夜のことであった。
私は、ショルダーバッグを持って和歌山市中心部にあるぶらくり丁(アーケード街)を歩いていた。
通りには、たくさんの人たちが往来していた。
通りのスピーカーから、八代亜紀さんの歌で『なみだ恋』が流れていた。
番頭《ばんと》はんからグロウされた私は、よりし烈な怒りに震えていた。
あのヤキソバハラマキ野郎…
今度見たらただではすまんぞ…
それよりも…
浅田飴《あさだあめ》のかんかんの中身がものすごく気になる…
中身がアメ玉なのに、なんでみどり色のガムテープがはられているのか…
これはなんぞあるにちがいあらへん…
そうこう考えていた時であった。
私は、とんでもない失態をまたやらかしてもうた。
また私は、裏の露地へ足を踏み入れてしまった。
またかいな…
また、ファベーラ(スラム街)に足を踏み入れてしまった…
また、やっかいなもめ事に巻き込まれたらどないしょ…
そう思っていた時であった。
「ヒィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ〜」
この時、情けない男の叫び声が聞こえた。
あれは実松《さねまつ》どんの声だ…
私は、現場の100メートル手前まで接近して様子を見た。
集団リンチを喰らってボロボロに傷ついた実松《さねまつ》どんは、ヤクザの男たちに許しごいをしていた。
「ヒィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ〜こらえてください〜」
「ふざけんなクソガキャ!!」
「おいクソガキ!!」
「なんやねん〜」
「なんやねんじゃなかろがボケ!!」
「オドレクソガキャ!!」
「おいコラ!!例のアレはどないしたんぞ!?」
「例のアレって?」
「あれはうちの組長が命の次に大事にしとる物や!!」
「せやからそれはなんやねん?」
「うちの組長はゼンソクをわずらっているのだぞ!!」
「ひらたく言えば、ゼンソクの薬や!!」
ゼンソクの薬?
それどう言うこっちゃねん?
私は、ますますわけがわからなくなった。
ヤクザの男のひとりが実松《さねまつ》どんの胸ぐらをつかみながら言うた。
「おいクソガキャ!!」
「こらえてーな〜」
「オドレは溝端屋の源五郎とどなな関係があるんや!?」
「ヒィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ〜」
「はけ!!はけといよんのが分からんのか!?」
(ドカッ!!)
ヤクザの男は、グーで実松《さねまつ》どんのわき腹を殴りつけた。
「ゲホゲホゲホゲホゲホゲホゲホゲホゲホゲホ…」
わき腹を殴られた実松《さねまつ》どんは、激しくせきこんだ。
ヤクザの男のひとりが実松《さねまつ》どんのえり首をつかみながら言うた。
「コラクソガキャ!!」
「ヒィィィィィィィィ〜」
「だれに頼まれてアレ盗んだ!?」
「だ、誰と言われても知りまへんねん…」
「もしかしたら竹宮か!?」
「違います〜」
「ウソつくな!!」
(ドカッ!!)
ヤクザの男は、実松《さねまつ》どんのお尻を右足でけとばした。
「ば、番頭《ばんと》はんじゃおまへんねん〜」
「ほんなら君波か!?」
「大番頭《おおばんと》はんでもありまへん〜」
「ほんなら、小番頭《こばんと》の磯村か!?」
「違います〜」
「ほんなら田嶋の手下の小林か!?」
「それも違います〜」
(ドカッ…ドサッ…)
袋叩きに遭った実松《さねまつ》どんは、地べたに倒れた。
ヤクザの男たちは、実松《さねまつ》どんの身体《からだ》を押さえつけたあと、えげつないことを始めた。
「なにしまんねん!!やめてください!!」
(ビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリ!!)
ヤクザの男たちは、実松《さねまつ》どんが着ていた丁稚服をズタズタに破いたあと実松《さねまつ》どんの身体《からだ》をぐちょぐちょに犯した。
「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
実松《さねまつ》どんは、よりし烈な叫び声をあげた。
恐ろしくなった私は、ショルダーバッグを抱いた状態でゆっくりとその場からあとにした。
それから数分後に、私は表通りに脱出することができた。
その後、私は一目散に和歌山港《みなと》へ向かった。
(ボーッ、ボーッ、ボーッ…)
日付が変わって、6月4日の深夜0時過ぎであった。
私は、徳島行きの南海フェリーに乗って関西から脱出した。
実松《さねまつ》どんをらちしてあそこへおしこめたヤクザ連中は、どこの組の構成員《チンピラ》や…
浅田飴《あさだあめ》のかんかんの中身はなんやねん…
あいつらの目的はなんだろうか?
あいつらは、だれをにくんでいるのか?
溝端屋のダンナ?
それとも、番頭《ばんと》はん?
それとも、田嶋?
もしかしたら…
大番頭《おおばんと》はんかもしれない…
それよりも…
実松《さねまつ》どんをらちしてあそこへおしこめたヤクザ連中は、どこの組の構成員《もん》や!?
たいへんだ!!
実松《さねまつ》どんがあいつらにしゃべるかもしれない!!
そうなったら、何もかもがわやになってしまう…
どないしたらええねん…
またところ変わって、JRと南海電車の和歌山市駅の北東寄りにある和歌山競輪場にて…
(ジャーン!!ジャーン!!ジャーン!!)
場内に、勝負開始をつげる鐘《ジャン》が鳴り響いた。
同時に、カラフルなユニフォームを着た9人の選手たちが自転車のペタルを加速させた。
観客席《スタンド》にいるお客さまたちが声をあげ始めた。
(ジャンジャンジャンジャンジャンジャンジャンジャンジャンジャンジャンジャンジャンジャンジャンジャンジャンジャンジャンジャンジャンジャンジャンジャンジャンジャンジャンジャン!!ワーッワーッワーッワーッワーッワーッワーッワーッワーッワーッワーッワーッワーッワーッワーッワーッワーッ!!ジャンジャンジャンジャンジャンジャンジャンジャンジャンジャンジャンジャンジャンジャンジャンジャンジャンジャンジャンジャンジャン!!)
鐘《ジャン》がより激しく鳴り響いたと同時に、観客席《スタンド》にいる観客たちがものすごく大きな叫び声をあげた。
9人の選手たちは、バンク上でし烈な闘いを繰り広げた。
ところ変わって、競輪場の入口付近にある広場にて…
私は、くまなく歩いて実松《さねまつ》どんを探していた。
5月30日に、実松《さねまつ》どんがらめんどいことをたのまれた私は、ものすごく怒り狂っていた。
実松《さねまつ》どんは、私にみどり色のガムテープが貼られた浅田飴《あさだあめ》のかんかんを預かってくれと頼んだあと、行方不明になった。
あのクソアホンダラ小僧は、どこへ逃げた!!
『2〜3日後に取りに行きます…』と言うたのに、取りに来ないとはどう言うことゾ!!
そんな中であった。
私は、広場で質屋《しちや》をしている番頭《ばんと》はんを見た。
ヤキソバヘアに黒のサングラスでももけた腹巻き姿の番頭《ばんと》はんは、競輪場へ来たおっちゃんたちが持ち込んだ金品を預かったあとカネを渡していた。
私が来た時、おっちゃんひとりがカネを返しに番頭《ばんと》はんのもとにやって来た。
番頭《ばんと》はんは、カネを受け取ったあとウォークマンをおっちゃんに渡した。
私は、ホクホクしているおっちゃんの背中《せな》をするどい目つきでにらみつけた。
この時、番頭《ばんと》はんが私に声をかけた。
「おう、コリント。」
「番頭《ばんと》はん。」
「コリント、こななところでなんしよんぞ?」
私は、困った声で番頭《ばんと》はんに言うた。
「なんしよんぞって、オレはゆかさんと小番頭《こばんと》はんを探して和歌山《ここ》まで来たんや。」
番頭《ばんと》はんは、あやしげな声で私に言うた。
「ああ、君波の次女《むすめ》を探しよったんか。」
「せや…オレ…先月の17日の夕方に門司港駅《もじのえき》でバナナのたたきうりのおっちゃんにおうた…同じ日に、ゆかさんが泉大津の港から阪九フェリーに乗って九州へ向かう予定だと聞いたけん…泉大津へ行こうとしたけど、南海電車《でんしゃ》がとまったけん行くことができんかった…」
「それは残念でしたねぇ〜」
「あと、小番頭《こばんと》はんも行方不明になってるさかいに、おんまく困っているんだよ。」
「磯村は、きまぐれな男だからあちらこちらをうろちょろしとるけん、見つけることは不可能でおます。」
「そうでおましたか…話し変わるけど、先月30日に萩の茶屋《あいりんちく》の公園で実松《さねまつ》どんが私にワケのわからん頼み事をしたあと、行方不明になった…アレ、どう言うこっちゃねん?」
私の問いに対して、番頭《ばんと》はんはヘーゼンとした声で答えた。
「ああ、実松《さねまつ》がコリントに会いに来たのですね。」
「番頭《ばんと》はん!!」
「なんやねん~」
「実松《さねまつ》どんは、頭がいかれとんとちゃいまっか!?」
「なにがですか?」
「なにがですかじゃなかろが!!」
「コリント、なんでそないに怒るねん?」
「怒りたくもなるワ!!浅田飴《あさだあめ》のかんかんに入っているアメ玉を2〜3日預かってくれと言うこと自体がおかしいねん!!」
番頭《ばんと》はんは、ヘラヘラした表情で私に言うた。
「コリント、すまんけどもうあと何日かアレ預かっといてくれる?」
「あと何日かって…そなな抽象的《あいまい》な言い方しないでください!!」
「分かってるよ〜」
「分かっているのであれば、はっきりと言うてください!!」
「だからはっきりと言うたよ〜」
「番頭《ばんと》はん!!人をおちょくるのもええかげんせえよ!!」
「分かってまんねん…せやけど、今はツゴーが悪いねん。」
「ますますはぐいたらしいのぉ〜!!いつまでオレはアレ(浅田飴《あさだあめ》のかんかん)を預からなアカンねん!!ツゴーが悪いと言うて逃げたらどないなるのか分かっとんか!?」
「コリント、そないに怒るなよ〜」
「ほなオレを怒らすな!!」
「コリントの気持ちはよぉ分かるさかいに…ワシは、1年も2年も預かってくれとはいよらんねん…もうあと7日でかまんけんアレ預かっといてくれる?」
「分かりました…7日後には取りに来てください!!」
番頭《ばんと》はんは、ヘラヘラした声で『へいへい』と言うた。
なんやねん一体もう…
番頭《ばんと》はんは、人をおちょくっとんか…
私は、ヘラヘラとしている番頭《ばんと》はんをにらみつけたあと競輪場から出ていった。
私ににらまれた番頭《ばんと》はんは、ヘラヘラした表情で商売をつづけた。
その日の夜のことであった。
私は、ショルダーバッグを持って和歌山市中心部にあるぶらくり丁(アーケード街)を歩いていた。
通りには、たくさんの人たちが往来していた。
通りのスピーカーから、八代亜紀さんの歌で『なみだ恋』が流れていた。
番頭《ばんと》はんからグロウされた私は、よりし烈な怒りに震えていた。
あのヤキソバハラマキ野郎…
今度見たらただではすまんぞ…
それよりも…
浅田飴《あさだあめ》のかんかんの中身がものすごく気になる…
中身がアメ玉なのに、なんでみどり色のガムテープがはられているのか…
これはなんぞあるにちがいあらへん…
そうこう考えていた時であった。
私は、とんでもない失態をまたやらかしてもうた。
また私は、裏の露地へ足を踏み入れてしまった。
またかいな…
また、ファベーラ(スラム街)に足を踏み入れてしまった…
また、やっかいなもめ事に巻き込まれたらどないしょ…
そう思っていた時であった。
「ヒィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ〜」
この時、情けない男の叫び声が聞こえた。
あれは実松《さねまつ》どんの声だ…
私は、現場の100メートル手前まで接近して様子を見た。
集団リンチを喰らってボロボロに傷ついた実松《さねまつ》どんは、ヤクザの男たちに許しごいをしていた。
「ヒィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ〜こらえてください〜」
「ふざけんなクソガキャ!!」
「おいクソガキ!!」
「なんやねん〜」
「なんやねんじゃなかろがボケ!!」
「オドレクソガキャ!!」
「おいコラ!!例のアレはどないしたんぞ!?」
「例のアレって?」
「あれはうちの組長が命の次に大事にしとる物や!!」
「せやからそれはなんやねん?」
「うちの組長はゼンソクをわずらっているのだぞ!!」
「ひらたく言えば、ゼンソクの薬や!!」
ゼンソクの薬?
それどう言うこっちゃねん?
私は、ますますわけがわからなくなった。
ヤクザの男のひとりが実松《さねまつ》どんの胸ぐらをつかみながら言うた。
「おいクソガキャ!!」
「こらえてーな〜」
「オドレは溝端屋の源五郎とどなな関係があるんや!?」
「ヒィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ〜」
「はけ!!はけといよんのが分からんのか!?」
(ドカッ!!)
ヤクザの男は、グーで実松《さねまつ》どんのわき腹を殴りつけた。
「ゲホゲホゲホゲホゲホゲホゲホゲホゲホゲホ…」
わき腹を殴られた実松《さねまつ》どんは、激しくせきこんだ。
ヤクザの男のひとりが実松《さねまつ》どんのえり首をつかみながら言うた。
「コラクソガキャ!!」
「ヒィィィィィィィィ〜」
「だれに頼まれてアレ盗んだ!?」
「だ、誰と言われても知りまへんねん…」
「もしかしたら竹宮か!?」
「違います〜」
「ウソつくな!!」
(ドカッ!!)
ヤクザの男は、実松《さねまつ》どんのお尻を右足でけとばした。
「ば、番頭《ばんと》はんじゃおまへんねん〜」
「ほんなら君波か!?」
「大番頭《おおばんと》はんでもありまへん〜」
「ほんなら、小番頭《こばんと》の磯村か!?」
「違います〜」
「ほんなら田嶋の手下の小林か!?」
「それも違います〜」
(ドカッ…ドサッ…)
袋叩きに遭った実松《さねまつ》どんは、地べたに倒れた。
ヤクザの男たちは、実松《さねまつ》どんの身体《からだ》を押さえつけたあと、えげつないことを始めた。
「なにしまんねん!!やめてください!!」
(ビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリ!!)
ヤクザの男たちは、実松《さねまつ》どんが着ていた丁稚服をズタズタに破いたあと実松《さねまつ》どんの身体《からだ》をぐちょぐちょに犯した。
「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
実松《さねまつ》どんは、よりし烈な叫び声をあげた。
恐ろしくなった私は、ショルダーバッグを抱いた状態でゆっくりとその場からあとにした。
それから数分後に、私は表通りに脱出することができた。
その後、私は一目散に和歌山港《みなと》へ向かった。
(ボーッ、ボーッ、ボーッ…)
日付が変わって、6月4日の深夜0時過ぎであった。
私は、徳島行きの南海フェリーに乗って関西から脱出した。
実松《さねまつ》どんをらちしてあそこへおしこめたヤクザ連中は、どこの組の構成員《チンピラ》や…
浅田飴《あさだあめ》のかんかんの中身はなんやねん…
あいつらの目的はなんだろうか?
あいつらは、だれをにくんでいるのか?
溝端屋のダンナ?
それとも、番頭《ばんと》はん?
それとも、田嶋?
もしかしたら…
大番頭《おおばんと》はんかもしれない…
それよりも…
実松《さねまつ》どんをらちしてあそこへおしこめたヤクザ連中は、どこの組の構成員《もん》や!?
たいへんだ!!
実松《さねまつ》どんがあいつらにしゃべるかもしれない!!
そうなったら、何もかもがわやになってしまう…
どないしたらええねん…