乳房星(たらちねぼし)〜再出発版
第17話・夜と朝のあいだに

【手紙】

6月30日に溝端屋のダンナたちの密談を聞いたことが原因で、私の気持ちはひどくビンカンになった。

6月5日に多度津の桃陵公園《とうりょうこうえん》で健太からボコボコにどつき回されたあとがけから突き落とされそうになった溝端屋のダンナは、健太に対する怒りをより一層強めたようだ。

あの様子だと、溝端屋のダンナたちはより過激な行動に踏み切るおそれがある。

溝端屋のダンナにわびを入れる気がない健太が完全にアウトになる可能性がきわめて高くなった。

健太…

手遅れになる前に、溝端屋のダンナにわびを入れた方がええぞ…

ホンマにええかげんにせえよ(ブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツ…)

話は変わって…

7月3日の夕方5時頃であった。

ところ変わって、福岡市中央区長浜にあるラーメン屋にて…

私は、ここで日雇いのバイトをしていた。

4時間勤務で、時給は1500円であった。

私は、チュウボウで食器洗いをしていた。

夜9時頃にバイトが終わった。

私は、日当6000円を受け取ったあと歩いて西鉄と地下鉄の天神駅へ向かった。

このあと、私は天神駅から西鉄本線の電車に乗って西鉄二日市駅(筑紫野市)まで行く予定であったが、道をまちがえて違う場所に迷い込む失態をまたやらかしてもうた。

それと同時に、私はおんまくえげつない話を聞いてしまった…

ところ変わって、天神駅の裏手にある警固公園《けごこうえん》にて…

とんでもない失態をやらかした私は、公園内の遊歩道をトボトボと歩き回った。

その時に、中肉で派手なシャツを着た40前くらいの男が警固神社《けごじんじゃ》へ向かって走って行く様子を目撃した。

それから2分後であった。

私は、警固神社《けごじんじゃ》の手前200メートルのところに到着した。

私は、身をひそめて現場をうかがった。

神社の境内《けいだい》に男ふたりがいた。

番頭《ばんと》はんや…

番頭《ばんと》はんと一緒にいる中年の男は誰や?

番頭《ばんと》はんと一緒にいる中年の男は、ルポライターでフツギョウ芸能(大衆週刊誌)のヤクザ関連の記事の関西以西担当の記者であった。

津乃峰《つのみね》は、番頭《ばんと》はんに家出していた健太が警察署に保護されたことを番頭《ばんと》はんに報告した。

津乃峰《つのみね》から報告を受けた番頭《ばんと》はんは、不気味な声で言うた。

「ああ、さよか…尾儀原《クソガキ》は鳴門の警察署に保護されやしたか…それで、尾儀原《クソガキ》の身元ヲタ引き受けたのはだれや?」
「尾儀原《クソガキ》の親御《ふたおや》です。」
「そうか…分かった…ほんなら話を変えるぞ…6月24日に伊予北条《ほうじょう》の風早連合《かざはやれんごう》の組長が殺された事件のことだが…尾儀原《クソガキ》の特別手配の取り消しにかかわった官僚《グル》どもを指揮したリーダーはだれや?」
「元東予警察署(今は西条西警察署)の巡査長で、今は愛媛県警《けんけい》本部の捜査一課長の近衛《このえ》でおます。」
「近衛《このえ》…」
「へえ。」
「この最近、愛媛県警《けんけい》本部の官僚《グル》どもに目立った動きはないか?」
「今のところは…おまへん。」
「ああ、さよか。」

津乃峰《つのみね》は、辺りをキョロキョロと見渡したあと番頭《ばんと》はんに新たなタレコミをしゃべった。

「竹宮…ここだけの話だが…近衛《このえ》のジジイの交友関係を調べて来た。」

番頭《ばんと》はんは、ニヤニヤした表情で右手で作ったパーを出して『これでどうだ?』とつぶやいた。

「5000万…」
「せや…場合によっては…2倍にしまっせ〜」
「ええ、ホンマでっか!?」
「声が大きいぞ!!」

声が大きすぎるんだよボケ…

私は、心中でつぶやきながら現場の様子をうかがった。

番頭《ばんと》はんは、津乃峰《つのみね》に5000万円の小切手を手渡した。

小切手を受け取った津乃峰《つのみね》は、番頭《ばんと》はんにことの次第をしゃべった。

「竹宮…近衛《このえ》の官僚《クソッタレ》は、東予警察署時代に恵須取《えすとる》会の会長はんから高価な貴金属類をぎょーさん受け取っていました。」
「ほう、そいつは初耳だな…理由は?」
「きっかけは、今から7年前に松山市内で発生したヤクザがらみのトラブルであります。」

7年前…

…と言うと、1988年頃?

津乃峰《つのみね》は、番頭《ばんと》はんにことの次第をしゃべった。

「7年前、当時地元の公立大学の3回生だった近衛《このえ》の娘ムコになる予定の男性《おとこ》が松山市内の国道で右翼団体の車に対してあおり運転した事件があったのをごぞんじでしょうか?」
「ああ…たしか、その車の中に大学のサークル仲間が数人乗っていたな〜」
「ええ…近衛《このえ》の娘ムコになる予定の男性《おとこ》は、右翼団体の車に対してあおり運転したあと、団体の構成員《チンピラ》どもと大乱闘を繰り広げた…その後、構成員《チンピラ》数人が刃物で斬《き》られて殺された…」
「それで?」
「事件を聞いた男性《おとこ》の親族がものすごい血相で、弁護士のもとへ行った。」
「その弁護士は、どこのどいつや?」
「押岡《おしおか》でおます。」
「押岡《おしおか》…」
「押岡《おしおか》は、旧友である近衛《このえ》に助けを求めた…恵須取《えすとる》会の会長はんと近衛《このえ》が出会ったきっかけは…押岡《おしおか》の旧友の旧友にあたる元チャンプのプロボクサーの男からの紹介で出会いました…竹宮…これが証拠だ…」

津乃峰《つのみね》は、『カメラのキタムラ』のロゴ入りの大きなふくろを番頭《ばんと》はんに手渡した。

番頭《ばんと》はんは、ふくろの中から写真のたばを取り出した。

写真を見た番頭《ばんと》はんは不気味な声で『ヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ…』と嗤《わら》った。

あの写真には…

ソートーやばいもんが写っていると思う…

番頭《ばんと》はんは、不気味な声で津乃峰《つのみね》に言うた。

「こいつはケッサクだ…津乃峰《つのみね》、よくやったな~」な」
「へえ、おかげさまで…」
「津乃峰《つのみね》、この写真を(小切手と)同額で買い取るぞ。」
「えっ?」
「ほれ…」

番頭《ばんと》はんは、さらに5000万円の小切手を津乃峰《つのみね》に渡した。

「おお〜…おおきに〜」
「おい、新たな情報が入ったら…またワシに知らせろ。」
「へえ。」

合わせて1億…

あの小切手は…

どこから出たのだ?

たぶん…

溝端屋のダンナのポケットマネーから出たかもしれない…

…………

番頭《ばんと》はんは、津乃峰《つのみね》にこう言うた。

「おい津乃峰《つのみね》…景気づけにのみに行こや…おごるぜ…」
「おおきに…ほな、中洲へ行きまひょか?」

私は、番頭《ばんと》はんと津乃峰《つのみね》に見つからないようにゆっくりと現場から離れた。

さて、その頃であった。

ところ変わって、今治市高地町《いまばりしこうちちょう》にある公園にて…

30代前半の女性が公園のベンチに座って赤ちゃんをあやしていた。

女性は、公園に来てから40分後に赤ちゃんを抱いて公園を出ようとした。

その時であった。

黒い覆面をかぶった男6人が女性を無理やり引っ張り出した。

「イヤ!!やめて!!離して!!」
「フギャーーーーーーー!!フギャーーーーーーーー!!」

女性は、赤ちゃんを抱っこした状態で男たちに引っ張り出されたあと、黒のトヨタエスティマに無理やり乗せられた。

その後、車は現場から急発進した。
< 161 / 200 >

この作品をシェア

pagetop