乳房星(たらちねぼし)〜再出発版
【哀愁エリア】
次の日の午後2時過ぎのことであった。
またところ変わって、京橋駅の大阪環状線《かんじょうせん》の高架《ガード》下の電話ボックスの前にて…
「えらいこっちゃ〜…会社に電話しなきゃ!!」
この時、スーツ姿の男性がものすごく切羽詰まった様子で例の電話ボックスヘ入ろうとした。
そこへ、番頭《ばんと》はんがスーツ姿の男性のえりくびをつかみながら怒鳴り声をあげた。
「コラ!!そこに入るな!!」
「なにすんねん〜」
「ここはオレの縄張りだ!!」
「離せコラ!!」
私は、建物の死角から電話ボックス付近の様子を見ていた。
スーツ姿の男性を追い払った番頭《ばんと》はんは、例の電話ボックスに入ったあと使い古しのノートを出した。
番頭《ばんと》はんは、使い古しのノートをひらいた。
ノートには、ワケのわからん数字がたくさん書かれていたようだ。
(ジリリリリリリン!!ジリリリリリリン!!ジリリリリリリン!!)
この時、カード式の電話機のベルが鳴った。
番頭《ばんと》はんは、受話器をあげて話し始めた。
「はいもしもし…おう、久しぶり…えーと、きょうのJリーグの試合のあれだけど…おう、決まったか…えーと…セレッソ大阪ホーム勝ちに200…おっ、ええ度胸してまんな…まいどあり…他には…へえへえ…」
例の電話ボックスは、番頭《ばんと》はんが野球・サッカー・大相撲などのトバクの電話で使われていたことが分かった。
番頭《ばんと》はんは、いつ頃からあの電話ボックスを独占するようになったのか?
くわしいワケが知りたくなった…
ところ変わって、国道1号線沿いの東野田町2の交差点付近にあるたばこ屋にて…
私は、たばこ屋のおばちゃんに例の電話ボックスのことについてたずねた。
私の問いに対して、おばちゃんはこう答えた。
「あそこ(高架《ガード》下)は昔からヤクザのナワバリになっているのよ…せやけん、あの(電話ボックスの)付近でトラブルがしょっちゅう起こっているのよ。」
「むかしって…何年くらい前からこななことになったの?」
「かれこれ10年前(1985年)からだったと思うけど…」
「10年前?」
「あんた知らんかったん…」
「えっ?」
「その頃、長州組と洲和会による血みどろの抗争事件があったのよ。」
「ヤクザ同士の抗争事件があったんですか?」
「そうよ…」
「そこの電話ボックス付近は、どちらのナワバリになっているのですか?」
「あそこは、今も昔も長州組のナワバリよ。」
「それじゃあ、なんでトラブルがしょっちゅう起こっていたのですか?」
「だから、10年前にあそこの電話ボックスで洲和会の構成員《チンピラ》が電話をかけていたのよ…そこでもめ事が発生したのよ…構成員《チンピラ》の男は、拳銃《てっぽう》で撃たれて殺されたのよ。」
「拳銃《チャカ》で命《どたま》ぶち抜かれたって?」
「そうよ。」
「あの〜…その時に…この男を見かけましたか?」
私は、たばこ屋のおばちゃんに番頭《ばんと》はんの写真を見せた。
おばちゃんは、私に言うた。
「ああ、この男よ…洲和会の構成員《チンピラ》の男を拳銃《てっぽう》で撃ったのは…この男だったのよ。」
「そうだったのですか…」
たばこ屋のおばちゃんから話を聞いた私の背筋に、より激しいセンリツが直撃した。
時は、夜8時50分頃であった。
引き続き建物の死角に隠れている私は、電話ボックス付近の様子を見ていた。
この時、例の電話ボックスに派手なシャツを着たしょうたれ(だらしない)の男が入ったのを目撃した。
あのヤロー…
その電話ボックスに勝手に入ったらどないなるか…
わかっとんか…
しょうたれの男は、泣きそうな声で受話器ごしにいる相手に言うた。
「なんとか言うてくれ…オレは心を入れ替えて生きると訣心《けっしん》してヤクザから足を洗った…けれど、大失敗した…オレは悪くねえ…オレは悪くねえ…再就職先《いったさき》のモンが悪いんだよ…オレはまじめに生きると訣意《けつい》したのに…再就職先《いったさき》のモンが『マージャンしに行こや。』と言うて誘った!!…だから…再就職《いったさき》をやめた!!…新しい仕事は必ず見つけるから…ゆりこ…あななクソッタレテイシュと離婚《わかれ》ると言うたじゃないか…あれはうそなのか!?」
なんやて…
あのヤローは…
ゆりこに手ぇつけていたのか…
建物の死角にいる私は、よりし烈な怒りを込めながらしょうたれの男の背中《せな》をにらみつけた。
しょうたれの男は、メソメソ泣きながら受話器ごしにいるゆりこに助けを求めた。
「ゆりこ!!テイシュと離婚してくれ…もう一度ゆりことやり直したい…オレと結婚してくれ〜…オレはゆりこしかいないんだよ〜…なんとか言え!!」
この時、番頭《ばんと》はんが電話ボックスにやって来た。
「コラ!!クソガキャ!!」
電話ボックスのドアをあけた番頭《ばんと》はんは、しょうたれの男のえりくびをつかんで引っ張り出した。
「離せ!!離せ!!」
「オドレクソガキャ!!勝手に電話ボックスを使うな!!」
(ドカッ!!)
電話ボックスから引っ張り出された男は、番頭《ばんと》はんを右足でけとばしたあとふりはらった。
「テメー!!」
「オドレ竹宮!!」
しょうたれの男は、サバイバルナイフで番頭《ばんと》はんの右肩を切った。
そこへ、30人前後のチンピラの男たちがやって来た。
「アニキ!!」
「テメー!!よくもアニキを切ったな!!」
「やっつけてやる!!」
このあと、しょうたれの男は30人前後のチンピラの男をボコボコにどつき回して逃げた。
「待てコラ!!」
30人前後のチンピラの男たちは、しょうたれの男を追いかけた。
しょうたれの男にナイフで切られた番頭《ばんと》はんは、予め防弾防刃対応のチョッキを下に着ていたので難を逃れた。
しょうたれの男が番頭《ばんと》はんにたきつけて行ったことが原因で、番頭《ばんと》はんがより過激な行動に踏み切る恐れが出たようだ。
またところ変わって、京橋駅の大阪環状線《かんじょうせん》の高架《ガード》下の電話ボックスの前にて…
「えらいこっちゃ〜…会社に電話しなきゃ!!」
この時、スーツ姿の男性がものすごく切羽詰まった様子で例の電話ボックスヘ入ろうとした。
そこへ、番頭《ばんと》はんがスーツ姿の男性のえりくびをつかみながら怒鳴り声をあげた。
「コラ!!そこに入るな!!」
「なにすんねん〜」
「ここはオレの縄張りだ!!」
「離せコラ!!」
私は、建物の死角から電話ボックス付近の様子を見ていた。
スーツ姿の男性を追い払った番頭《ばんと》はんは、例の電話ボックスに入ったあと使い古しのノートを出した。
番頭《ばんと》はんは、使い古しのノートをひらいた。
ノートには、ワケのわからん数字がたくさん書かれていたようだ。
(ジリリリリリリン!!ジリリリリリリン!!ジリリリリリリン!!)
この時、カード式の電話機のベルが鳴った。
番頭《ばんと》はんは、受話器をあげて話し始めた。
「はいもしもし…おう、久しぶり…えーと、きょうのJリーグの試合のあれだけど…おう、決まったか…えーと…セレッソ大阪ホーム勝ちに200…おっ、ええ度胸してまんな…まいどあり…他には…へえへえ…」
例の電話ボックスは、番頭《ばんと》はんが野球・サッカー・大相撲などのトバクの電話で使われていたことが分かった。
番頭《ばんと》はんは、いつ頃からあの電話ボックスを独占するようになったのか?
くわしいワケが知りたくなった…
ところ変わって、国道1号線沿いの東野田町2の交差点付近にあるたばこ屋にて…
私は、たばこ屋のおばちゃんに例の電話ボックスのことについてたずねた。
私の問いに対して、おばちゃんはこう答えた。
「あそこ(高架《ガード》下)は昔からヤクザのナワバリになっているのよ…せやけん、あの(電話ボックスの)付近でトラブルがしょっちゅう起こっているのよ。」
「むかしって…何年くらい前からこななことになったの?」
「かれこれ10年前(1985年)からだったと思うけど…」
「10年前?」
「あんた知らんかったん…」
「えっ?」
「その頃、長州組と洲和会による血みどろの抗争事件があったのよ。」
「ヤクザ同士の抗争事件があったんですか?」
「そうよ…」
「そこの電話ボックス付近は、どちらのナワバリになっているのですか?」
「あそこは、今も昔も長州組のナワバリよ。」
「それじゃあ、なんでトラブルがしょっちゅう起こっていたのですか?」
「だから、10年前にあそこの電話ボックスで洲和会の構成員《チンピラ》が電話をかけていたのよ…そこでもめ事が発生したのよ…構成員《チンピラ》の男は、拳銃《てっぽう》で撃たれて殺されたのよ。」
「拳銃《チャカ》で命《どたま》ぶち抜かれたって?」
「そうよ。」
「あの〜…その時に…この男を見かけましたか?」
私は、たばこ屋のおばちゃんに番頭《ばんと》はんの写真を見せた。
おばちゃんは、私に言うた。
「ああ、この男よ…洲和会の構成員《チンピラ》の男を拳銃《てっぽう》で撃ったのは…この男だったのよ。」
「そうだったのですか…」
たばこ屋のおばちゃんから話を聞いた私の背筋に、より激しいセンリツが直撃した。
時は、夜8時50分頃であった。
引き続き建物の死角に隠れている私は、電話ボックス付近の様子を見ていた。
この時、例の電話ボックスに派手なシャツを着たしょうたれ(だらしない)の男が入ったのを目撃した。
あのヤロー…
その電話ボックスに勝手に入ったらどないなるか…
わかっとんか…
しょうたれの男は、泣きそうな声で受話器ごしにいる相手に言うた。
「なんとか言うてくれ…オレは心を入れ替えて生きると訣心《けっしん》してヤクザから足を洗った…けれど、大失敗した…オレは悪くねえ…オレは悪くねえ…再就職先《いったさき》のモンが悪いんだよ…オレはまじめに生きると訣意《けつい》したのに…再就職先《いったさき》のモンが『マージャンしに行こや。』と言うて誘った!!…だから…再就職《いったさき》をやめた!!…新しい仕事は必ず見つけるから…ゆりこ…あななクソッタレテイシュと離婚《わかれ》ると言うたじゃないか…あれはうそなのか!?」
なんやて…
あのヤローは…
ゆりこに手ぇつけていたのか…
建物の死角にいる私は、よりし烈な怒りを込めながらしょうたれの男の背中《せな》をにらみつけた。
しょうたれの男は、メソメソ泣きながら受話器ごしにいるゆりこに助けを求めた。
「ゆりこ!!テイシュと離婚してくれ…もう一度ゆりことやり直したい…オレと結婚してくれ〜…オレはゆりこしかいないんだよ〜…なんとか言え!!」
この時、番頭《ばんと》はんが電話ボックスにやって来た。
「コラ!!クソガキャ!!」
電話ボックスのドアをあけた番頭《ばんと》はんは、しょうたれの男のえりくびをつかんで引っ張り出した。
「離せ!!離せ!!」
「オドレクソガキャ!!勝手に電話ボックスを使うな!!」
(ドカッ!!)
電話ボックスから引っ張り出された男は、番頭《ばんと》はんを右足でけとばしたあとふりはらった。
「テメー!!」
「オドレ竹宮!!」
しょうたれの男は、サバイバルナイフで番頭《ばんと》はんの右肩を切った。
そこへ、30人前後のチンピラの男たちがやって来た。
「アニキ!!」
「テメー!!よくもアニキを切ったな!!」
「やっつけてやる!!」
このあと、しょうたれの男は30人前後のチンピラの男をボコボコにどつき回して逃げた。
「待てコラ!!」
30人前後のチンピラの男たちは、しょうたれの男を追いかけた。
しょうたれの男にナイフで切られた番頭《ばんと》はんは、予め防弾防刃対応のチョッキを下に着ていたので難を逃れた。
しょうたれの男が番頭《ばんと》はんにたきつけて行ったことが原因で、番頭《ばんと》はんがより過激な行動に踏み切る恐れが出たようだ。