乳房星(たらちねぼし)〜再出発版

【すずめの涙】

(ブロロロロロ…)

時は、深夜3時過ぎであった。

私は、徳山方面へ向かう大型トラックの運転席の後ろにある仮眠用ベッドで眠っていた。

大型トラックは、国道2号線を通って徳山方面へ向かっていたと思う。

東京から九州方面へ向かう寝台列車は、下松駅《くだまつえき》から立席特急券で乗ることができる…

とりあえずは、博多駅まで乗って行こう…

そこから先は、また考えたらええ…

私は、そう想いながら眠っていた。

(ピーッ、ゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトン…ゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトン…)

時は、1月16日の午前7時過ぎであった。

JR下松駅《くだまつえき》でトラックを降りた私は、寝台特急はやぶさに乗って九州へ向かった。

私は、個室B寝台の部屋にいた。

ベッドに寝転んでいる私は、ウォークマンで歌を聴いていた。

イヤホンから荒木とよひさ先生が作詞した歌がたくさん流れていた。

『四季の歌』『悲しみ本線日本海』『心凍らせて』『恋唄綴り』『化石の森』『うさぎ』『想い出迷子』『もしも明日が』『恋人たちの神話』『櫻《さくら》の花のように』『そしてめぐり逢い』『すずめの涙』…

イヤホンから泣き歌がたくさん流れていた。

ベッドに横たわっている私は、震える声で泣きながら歌を聴いていた。

「うううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううう…うううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううう…」

……………

時は流れて…

2023年8月末頃であった。

またところ変わって、プリンスエドワード島の本籍地の家の敷地内にある特大豪邸にて…

時は、夕方5時に10分前だった。

特大豪邸の大広間のテーブルで眠っていた私は、途中で目覚めた。

桜子たち(30億人の極爆乳ガールフレンドたちと1000人の極爆乳ガールフレンドたちと31人の極爆乳ラマンたち)とアンナとヨシユキがまだ家に帰っていない…

B班のメンバーたちとゆかさんもまだ帰っていない…

どこへ行ったのだろうか…

私は、エクスペリア(アンドロイドスマホ)のウォークマンの演奏を一度止めたあと、聴きたいアーティストを選び直した。

(ピッ、ピッ、ピッ、ピッ…)

私は、ケイ・ウンスクさんにカーソルをかぶせてタップしたあと聴きたい曲目を選んだ。

(ピッ、ピッ、ピッ…)

私は『すずめの涙』にカーソルをかぶせて一曲リピートにセットしたあと演奏ボタンを押した。

この時、イヤホンからものすごく悲しいイントロが流れてきた。

「うううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううう…うううううううううううううううううううううううううううううう…」

ものすごく悲しいイントロを聴いた私は、震える声で泣いた。

「桜子たち…アンナ…ヨシユキ…うううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううう…ううううううううううううううううううううううううううううううううううううううう…」

私は、震える声で泣きながら桜子たちとアンナとヨシユキを呼んだ…

それから数分後…

私は、深い眠りについた。

………………

再びつらかった頃の話に戻る。

時は、1995年2月末頃だったと思う。

またところ変わって、筑豊田川伊田町《ちくほうたがわいだちょう》にある居酒屋にて…

23歳の私は、ここのチュウボウでバイトをしていた。

豊後日田《ぶんごひた》から八幡西区陣原《やわたにしじんばる》を経て筑豊田川《ちくほうたがわ》に流れ着いたが、田川《ここ》もまた居心地があまりよくなかった。

私がチュウボウで食器洗いをしている時に、のんだくれの男性客《きゃく》がわけの分からないことをグダグダグダグダグダグダグダグダ言う声をよく聞いていた。

のんだくれの男性客《きゃく》が言う言葉は、自分の子どもがコーコーに行かないことに対する不満ばかりであった。

そのようなグダグダは、高校の卒業式が近い頃によく聞かれた。

『せがれがコーコーに行かない…』『コーコーに行けといよんのに、せがれは言うことを聞かない…』『ドーキューセーはどーのこーの…』…

あれ聞くだけでもホンマに腹立つわ。

とくに腹が立ったセリフは『ドーキューセーが希望に満ちあふれた学園生活を送っていると言うのに…』であった。

ふざけんなよ…

なにが希望に満ちあふれた学園生活だ…

いよる意味がぜんぜん分からん…

いつ頃だったかおぼえてないが、たしか高校の卒業式の前日の深夜だったと思う。

バイトしていた店のカンバン(閉店時間)は、深夜0時頃であった。

のんだくれの男性客《きゃく》がグダグダグダグダと言う声は、オーダーストップからカンバンの10分前ぐらいによく聞こえていた。

この時、ものすごくなさけない40代なかばの男性客《きゃく》が座っていた。

店のオカミは、のんだくれの男性客《きゃく》に対して『カンバンですよ。』と声をかけた。

「あんた、あと5分でカンバンよ。」
「なんやねんもう…」
「もうすぐカンバンよ!!はよ家に帰ってや!!」
「ぬぁーにぃ〜、家に帰れだと…イヤや!!」
「なにわけのわからんこといよんで!!奥さまとお子さんがものすごく心配しているわよ!!」
「そんなんどーでもええわ…おいコラ!!もう一本持ってこーーーーーーい!!」
「しょうがないわねもう(ブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツ…)」

オカミは、ブツブツ言いながらチュウボウへ引き返した。

オカミは、チュウボウにあるオカンを作る機械にセットしている白い徳利《おちょうし》を全部取り出したあとお盆に載せた。

その間に、店舗からのんだくれの男性客《きゃく》の女々しい泣き声が聞こえた。

「しくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしく…しくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしく…チクショーチクショーチクショーチクショーチクショーチクショーチクショーチクショーチクショーチクショーチクショーチクショーチクショーチクショーチクショーチクショーチクショーチクショーチクショーチクショーチクショーチクショーチクショーチクショーチクショーチクショーチクショーチクショーチクショーチクショーチクショー…チクショーーーーーーーーー!!」

このあと、オカンが徳利《おちょうし》がたくさん載っているお盆を持ってのんだくれの男性客《きゃく》のもとへ行った。

オカミは、徳利《おちょうし》がたくさん載っているお盆をテーブルの上に置いたあと、のんだくれの男性客《きゃく》に声をかけた。

「はいはい、もうわかったから泣かれん…」
「泣きたくもなるよ…しくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしく…しくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしく…せがれが…わしの楽しみをこっぱみじんにぶち壊した!!…しくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしく…しくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしく…」
「楽しみをこっぱみじんにぶち壊されたぐらいで泣かれん…それだったらまた新しい楽しみを作ったらァ〜」
「軽々しく言うな!!しくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしく…しくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしく…わしの楽しみは、せがれがコーコーに通うことじゃ!!」

オカミは、あきれた声でのんだくれの男性客《きゃく》に言うた。

「あんたの楽しみは、その程度しかないの?」

のんだくれの男性客《きゃく》は、怒った声でオカミに言うた。

「なんや!!もういっぺん言うてみろ!!わしの楽しみはその程度しかないだと!!」

のんだくれの男性客《きゃく》は、お盆に載っている徳利《おちょうし》に入っている日本酒《さけ》をガブガブとのみあさった。

そしてまた、しくしくしくしくと泣きながら言うた。

「あしたは、コーコーの卒業式なんだよ…せがれとドーキューセーの子たちは、希望に満ちあふれた表情で卒業式に臨《のぞ》むんだよ…卒業式のあとは…華のキャンパスライフが待っているんだよ…それなのにあのヤローはわしに背いた!!」
「(あきれた声で言う)はいはい分かりました…もうそのくらいにしとき。」
「ビービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービー…ビービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービー…」

のんだくれの男性客《きゃく》がはビービービービー泣き叫んだので、オカミは怒った声で言うた。

「ビービービービービービービービービービー泣かれん!!40なかばの男がみっともないわよ!!」
「やかましい!!ビービービービービービービービー泣きたくなるわ!!」
「甘ったれるのもええかげんにおし!!」
「やかましい!!せがれのせいでわしの人生がわやになった!!…もうイヤや…もうイヤや!!」

オカミは、怒った声でのんだくれの男性客《きゃく》に言うた。

「うち、あんたのいよることが理解できん!!あんたはお子さんに対して要求《もとめて》ばかりいることに気がついてよ!!」
「やかましい!!わしはせがれにドーキューセーと同じ道を歩んでほしいんや!!…ドーキューセーと同じコーコーを卒業して…ドーキューセーと同じ大学へ行って…ドーキューセーと同じ事業所《かいしゃ》にシューショクすることだけを望んでいるんや!!」
「だからあんたの夢はその程度しかないのよ!!」
「やかましい!!」
「あんたのお子さんとドーキューセーの子たちは違うのよ!!」
「いいや!!同じだ!!」
「わけのわからんことを言われん!!」
「いいや!!同じだ!!…せがれのドーキューセーの子たちは、ちいちゃい時から知っている子たちばかりだ…せがれとドーキューセーはちいちゃい時から今までの間…」
「たとえ仲良しであっても、考え方・価値観は違うのよ!!それよりも、あんたはお子さんにコーコーに行ってくれと言うたわね!!…そんなにコーコーに通っている姿が見たいのであれば、コーコー変えたらァ!?」
「なんでコーコーを変えるねん!!」
「働きながらでも通える定時制か通信制のコーコーに変えたらどうなの!?」
「やかましい!!わしがいよるコーコーは全日制に限る!!」
「やかましいはあんたでしょ!!」
「夏休み冬休み春休み土曜半ドン…休みがないのはかわいそうだとは思わんのか!?」
「だからあんたはしょぼいのよ!!」
「ふざけるな!!ワーワーワーワーワーワーワーワーワーワーワーワーワーワーワーワーワーワーワーワーワーワー!!」
「やかましいわねあんたは!!もう怒ったわよ!!」

のんだくれの男性客《きゃく》が奇声をあげたと同時に、オカミが思い切りブチ切れた。

この時、のんだくれの男性客《きゃく》の職場の人が店にやって来た。

職場の人は、のんだくれの男性客《きゃく》に対して困った声で言うた。

「(男性客)さん、(男性客)さん…」
「なんやねん…」
「迎えに来たよ…おうちへ送ってあげるから…」
「イヤや!!帰らん!!」
「なにいよんで…奥さまとお子さんが心配しているよ。」
「やかましい!!心配なんかしてへんわ!!せがれはわしの楽しみをこっぱみじんにぶち壊した!!」
「息子さんの行くコーコーについては…」
「コーコーは全日制に限る!!」
「だから、全日制で受け入れ可能なコーコーが見つかったよ…あした編入学の手続きを取るから…早く家に帰りましょう。」
「イヤや!!イヤや!!…しくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしく…チクショーチクショーチクショーチクショーチクショーチクショーチクショーチクショーチクショーチクショーチクショーチクショー…せがれとドーキューセーが希望に満ちあふれた表情で同じコーコーへ通う姿が見たいよぅ…しくしくしくしくしくしくしくしくしくしく…あんたがいよるコーコーは、わしがのぞんでいるコーコーじゃない!!…しくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしく…断われ!!断われドアホ!!」

のんだくれの男性客《きゃく》は、あぐらをかいた状態でグダグダ言いながら泣きまくった。

グダグダグダグダ言うんじゃねえよ泣き上戸…

23歳の私は、のんだくれの男性客《きゃく》と知人の男性を白い目で見ながらつぶやいた。
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