乳房星(たらちねぼし)〜再出発版
第9話・ルビーの指環

【悲しみのゆくえ】

時は、9月18日の朝9時半頃であった。

(パタパタパタパタパタパタパタパタパタパタパタパタパタパタパタパタパタパタ…)

山方町の山林の上空に愛媛県警のヘリコプターがセンカイしていた。

山林では、愛媛県警の捜査員1000人が総出で現場捜索をしていた。

捜索の結果、覆面をかぶった男ふたりの遺体が発見された。

男の身元は、竜史《たつし》と竜興《たつおき》のきょうだいであることが判明された。

同時に、山林で行方不明になったゆりこをレイプした容疑者も竜史《たつし》と竜興《たつおき》のきょうだいであることも判明した。

竜也《たつや》は、ケーサツから竜史《たつし》と竜興《たつおき》が死亡したこととレイプ事件の容疑者であると言う一報は聞いた。

しかし、竜也《たつや》はケーサツに対して『ふたりとも、戸籍《せき》を抜いたからどーなろうが知らん!!』と言うてキョヒした。

竜史《たつし》と竜興《たつおき》の遺体は、一両日中《いちりょうじつちゅう》に斎場《やきば》でやかれるはこびとなった。

その後、ふたりの遺骨はムエンボトケとしてマイソウされる。

そのまた一方で、ゆりこが行方不明のままであった。

9月20日の午後1時頃であった。

ところ変わって、すいふう苑《えん》(斎場《やきば》)の北東よりの方向にある小さな山寺《おてらさん》にて…

山寺《おてらさん》の近くにある駐車場に愛媛県警の車両と地域の消防団の団員さまたちが運転している車両がたくさん停まっていた。

山寺《おてらさん》の付近は、キンパクした空気に包まれていた。

またところ変わって、高地町《こうちちょう》にある大きな池にて…

愛媛県警の捜査員たち100人と地域名が入っているハッピを着ている消防団員さまたち50人は、大きな池で行方不明になったゆりこの捜索をしていた。

付近の住民から、ゆりこが着ていたマゼンタのヒップハンガーショーツを発見したと言う知らせがあった。

それに伴って、警察と消防団が共同で捜索していた。

その結果、ブラジャーだけつけた状態のゆりこが浮いているのを発見した。

ゆりこは、あちらこちら逃げ回った末に大きな池に転落したようだ。

時は、夕方5時過ぎであった。

(ブロロロロロ…キーッ)

またところ変わって、小さな山寺《おてらさん》にて…

山寺《おてらさん》のせまい敷地にいずみ観光のロゴ入りのマイクロバスが停まった。

マイクロバスの中から、ヨリイさんと施設で暮らしているお母さま方15人が降りた。

ヨリイさんとお母さま方15人は、大急ぎで山寺《おてらさん》に入った。

山寺《おてらさん》の中にて…

大きな仏だんの前に、ゆりこの遺体が収棺《おさめ》られている棺おけが安置《あんち》されていた。

付近にいた警察署の職員が、ヨリイさんを棺おけに案内した。

つづいて、別の職員ふたりが棺おけのふたをあけた。

ゆりこは、白のたびだちの衣装を着せられた状態で安らかに永眠《ねむっ》ていた。

警察署の職員に案内されたヨリイさんは、震える声で言うた。

「まちがいありません…母子保護施設《うちのしせつ》で暮らしている鳥居ゆりこちゃんです…」

15人のお母さま方は、ゆりこが収棺《おさめ》られている棺おけの前に集まったあと、一斉に号泣《さけびごえ》をあげた。

「ゆりこちゃん!!」
「ゆりこちゃん!!」
「なんで死んだのよ!!」
「ゆりこちゃん!!」

ヨリイさんは、取り出した白いハンカチーフで目頭をおさえながら泣いていた。

ゆりこが収棺《おさめ》られた棺おけは、その日のうちに波止浜の母子保護施設《しせつ》ヘ送られた。

話は、その翌日の正午前《ひるまえ》のことであった。

ところ変わって、波止浜の母子保護施設《しせつ》の食堂にて…

食堂には、施設で暮らしているお子さまたちとお母さま方たちと施設で暮らしていた子どもたちの家族8組が喪服姿(学校の制服姿の子どもさんもいた)で集まっていた。

このあとの予定は、午後1時より告別式〜その後、すいふう苑《えん》(斎場《やきば》)ヘ行く…となっていた。

ゆりこが収棺《おさめ》られている棺おけと葬儀用の祭壇《さいだん》は、集会室にセットされていた。

そんな中であった。

「ちょっと、ここから出してよ!!ここから出して!!」

この時、棺おけの中からゆりこの怒鳴り声が聞こえた。

ちょうどその時、施設で暮らしていた男の子(イワマツと同い年)の5歳の男の子が集会室に勝手に入った。

5歳の男の子は、ふしぎそうな顔で棺おけに近づいた。

そこへ、男の子のお母さまがやって来た。

「勝手に入っちゃだめでしょ!!」
「ママ、棺おけの中から叫び声が聞こえてるよ~」
「寝ぼけたこと言わないの!!」

お母さまは、男の子を連れて食堂ヘ戻った。

それから2分後であった。

男の子がまた勝手に集会室に入った。

お母さまが男の子を追いかけてきた。

「いけません!!」
「ママ、本当だよ!!」
「それじゃあよーく見なさい!!」

この時、ゆりこがものすごい血相で凄んできた。

「ちょっと助けてよ!!ゆりこ!!まだ死にたくない!!」

それを聞いたお母さまは、し烈な悲鳴をあげた。

「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」

この時、施設で暮らしているお母さま方たち15人と施設で暮らしている男の子たち6人が集会室に入った。

「どうしたどうした!!」
「棺おけの中から、女性の叫び声が〜」
「なんだって?」
「あそこ…」

棺おけの中でゆりこの怒鳴り声が響いた。

「ちょっと!!あけてよ!!」

男の子ふたりは、大急ぎで棺おけのふたをあけた。

同時に、白のたびだち服姿のゆりこが棺おけから出てきた。

「ちょっとなによこれ…ゆりこ!!わけが分からなくなった!!」

施設で暮らしているお母さま方たち15人は、ゆりこのもとにかけよった。

「ゆりこちゃん!!」
「ゆりこちゃん!!」
「よかった!!」
「ゆりこちゃん生きてたのね!!」

お母さま方たち15人は、ゆりこに抱きついてワーワーと泣いていた。

集会室の入り口にいたヨリイさんは、全身をワナワナと震わせながら『なんなのよ一体もう!!』とつぶやきながら怒りまくった。

ゆりこは生還《せいかん》できたが、反省の色は全くなかった。
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