乳房星(たらちねぼし)〜再出発版
【釜ヶ崎人情】
時は、1995年5月13日の夕方5時半頃であった。
ところ変わって、大阪西成区萩之茶屋《おおさかにしなりあいりんちく》にある公園にて…
私は、西成《かま》の住人《おっちゃん》たちと一緒に炊《た》き出《だ》しの列に並んでいた。
炊き出しを受け取った私は、公園のベンチに座って晩ごはんを摂った。
空は、青空から夕暮れの色に変わったあと少しずつ暗くなって行こうとしていた。
時は、深夜11時過ぎのことであった。
またところ変わって、地区内にある簡易宿《ドヤ》にて…
簡易宿《ドヤ》は一泊700〜800円と安いが、部屋がものすごく狭い上にテレビがない…
ふとん一枚が敷けるだけのスペースしかない部屋でも、寝るところがあるだけでも十分であった。
ふとんの中で横になっている私は、ふてくされた表情でラジオを聴きながら考え事をしていた。
イヤホンからNHKラジオ第一放送で放送されている『ラジオ深夜便』が流れていた。
考え事をしている私は、天井を見つめながらつぶやいた。
私は…
これから先…
どないしたらええねん…
大番頭《おおばんと》はんたちとマァマが行方不明になっているので、ものすごく困っている…
そのまた上に…
道後温泉街《どうご》で暮らしているドナ姐《ねえ》はんも音信不通になった…
私は、1976年1月から1994年9月30日頃まで海外に滞在していた…
1994年10月の始め頃に来日した…
来日してから7ヶ月の間、京阪神《アーバンネットワークエリア》と九州北部の各地を放浪しながら大番頭《おおばんと》はんたちとマァマを探したけど、見つからなかった。
もしかしたら…
私は…
だまされた…
かもしれない…
もし…
それがホンマだったら…
…と思うと…
私は、アレコレと考えて見たけど答えは見つからなかった。
ほんならどないしたらええねん…
私は…
西成《カマ》の住人《おっちゃん》たちと同じ人生を送ることになるかもしれない…
………
翌朝7時半頃であった。
私は、公園で行われている炊き出しの列に住人《おっちゃん》たちと一緒に並んでいた。
炊き出しを受け取ったあと、ベンチに座って朝ごはんを食べていた。
そんな時であった。
ももけた(ボロボロ)作業服姿の住人《おっちゃん》が私に声をかけた。
「おいぼうず!!」
「は?」
「ぼうずは年齢《とし》なんぼぞ!?」
「なんぼって…23…だけど…」
「23…若いのぉ〜…ぼうずはなんで西成《カマ》ヘ来たんぞ!?」
「なんでって?」
住人《おっちゃん》は、ものすごくあつかましい声で私に言うた。
「おいぼうず!!」
「(ものすごくめんどくさい声で言う)なんやねん…」
「ぼうずは親御《おや》おるんか!?」
「親御《おや》?」
「親御《おや》おるんかおらんのかどっちや!?」
「(ひねた声で言う)親御《おや》おらん!!」
「うそ言うな!!」
「(むきになった声で言う)いてへん言うたらいてへん!!」
「ホンマか!?」
「ホンマにいてへん!!」
住人《おっちゃん》は、私にあつかましい声で言うた。
「ぼうずは、なんとも思わへんのか!?」
「なんとも思わへんのかって?」
「ぼうずはなーんも分かってへんみたいやのぉ!!自分の胸にてぇあててよおーに考えてみろ!!」
自分の胸にてぇあててよおーに考えてみろって…
どういうこっちゃねん…
ワケがわからんなったワ…
住人《おっちゃん》は、なおもあつかましい声で私に言うた。
「ぼうずの耳に親御《おや》の泣き声は聞こえんのか!?」
はっ?
親御《おや》の泣き声が聞こえんのかって、どういうこと?
私は、コンワクした表情でつぶやいた。
住人《おっちゃん》は、ますますあつかましい声で私に言うた。
「コラ!!コラといよんのが聞こえんのか!?」
「(めんどくさい声で)なんやねん…」
「コラは、ワシがいよる言葉が分からんのか!?」
「(めんどくさい声で)せやから、おっちゃんはなにが言いたいねん…」
「(ますますあつかましい声で言う)ワシはコラに家へ帰れといよんじゃ!!」
「(めんどくさい声で)家?」
「せや!!」
「(めんどくさい声で)家ってなに?」
「(ますますあつかましい声で言う)ぼうずの家はどこぞ!?」
「(ものすごくひねくれた声で)家なんかあらへんねん!!」
「(ものすごく怒った声で)よいよい、コラはすなおじゃないのぉ〜!!家がなかったら一番困るのはだれやとおもとんぞ!?」
「(めんどくさい声で)もうええねん…おっちゃんのおこごとなんぞ聞きとないワ…」
住人《おっちゃん》に対してめんどくさい声で言うた私は、ショルダーバッグをたすきがけにした状態でベンチから立ち上がった。
住人《おっちゃん》は、公園から立ち去ろうとした私に怒った声で言うた。
「コラ!!どこへ行くんぞ!?」
私は、住人《おっちゃん》に対してひねた声で言うた。
「居場所がなくなったから旅に出るんだよ…西成《ここ》は居心地がものすごく悪いねん…って言うか…こなな日本国《クソッタレのくに》に来て大失敗したわ…おっちゃんがどないにお説教しようともオレはオレや!!…それだけは言うとこわい…ほな、しゃいなら!!」
その後、私はショルダーバッグを持って公園から立ち去った。
おっちゃんは、全身をワナワナと震わせながら怒っていた。
(ピーッ、ゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトン…ゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトン…)
時は、夜9時過ぎであった。
私は、下りの寝台特急なは号に乗って再び九州ヘ向かった。
私は、個室B寝台の部屋にいた。
ベッドに寝ている私は、ふてくされた表情で天井を見つめながらつぶやいた。
西成《かま》の住人《おっちゃん》は、私に対して『家がなかったら困るのはコラだぞ!!』と言うた…
家がなかったら困ると言うテイギが全く分からない…
結局、住人《おっちゃん》は私になにが言いたかったのか?
寝るところと食べ物がなかったら困る…
フロに入れなかったら困る…
………
分かるように言うてほしかったなぁ〜
………
他に困ることって、なんやねん…
高校《コーコー》?
高校《コーコー》は、レポート提出のみで卒業単位を取得したからなーんも困ってへんワ…
小学校・中学校・高校からマサチューセッツ工科大学までぜーんぶレポート提出のみで卒業単位を取得した…
並行して、アメリカ合衆国の国防総合大学と超有名医大ヘ行った…
仕事に必要な資格・9999億9999万9999種類と9999億9999万9999号の修士号・博士号を保有している…
…という事が言えんかっただけや…
住人《おっちゃん》は、他にも『嫁はんはいらんのか!?』とも言うた。
嫁はんはいらん…じゃなくて必要ないんだよ…
あのとき(私が実母の胎内《なか》にいた頃)、事務長《じむちょう》はんが『恋愛《こい》をしたらのぼせるからダメ!!』と言うて、私に『恋愛《こい》をするな!!』とか『結婚するな!!』…と言うて私に生涯独身で通せと強要《めいれい》した…
事務長《じむちょう》はんが『セヴァスチャンじいさんの厳命《めいれい》にしたがえ!!』と言うたけん、私はその通りの人生を送った。
ところが、大番頭《おおばんと》はんたちとマァマが行方不明になったから話にならへん…
そういうことで、私はだまされてしまった…
…と言うことや。
こなな思いをするのであれば、社内恋愛をスイシンしている大企業《カイシャ》に就職した方がよかったわ…
社内で知り合った女性《カノジョ》と恋愛《こい》をして…
入籍《けっこん》して…
一姫二太郎サンサンシでシアワセイッパイ…
…の人生の方がよかったわ…
いや、まてよ…
やっぱり、生涯独身の方がいいと思う…
結婚なんぞイヤや!!
生涯独身の方が気楽でええわ!!
…………
そのように思ったのは…
あの日や…
あの日は…
施設で暮らしていた子ども同士の結婚式があった…
あの時…
イビツなもめごとが発生した…
その時の様子を…
私は目撃した…
…………
ところ変わって、大阪西成区萩之茶屋《おおさかにしなりあいりんちく》にある公園にて…
私は、西成《かま》の住人《おっちゃん》たちと一緒に炊《た》き出《だ》しの列に並んでいた。
炊き出しを受け取った私は、公園のベンチに座って晩ごはんを摂った。
空は、青空から夕暮れの色に変わったあと少しずつ暗くなって行こうとしていた。
時は、深夜11時過ぎのことであった。
またところ変わって、地区内にある簡易宿《ドヤ》にて…
簡易宿《ドヤ》は一泊700〜800円と安いが、部屋がものすごく狭い上にテレビがない…
ふとん一枚が敷けるだけのスペースしかない部屋でも、寝るところがあるだけでも十分であった。
ふとんの中で横になっている私は、ふてくされた表情でラジオを聴きながら考え事をしていた。
イヤホンからNHKラジオ第一放送で放送されている『ラジオ深夜便』が流れていた。
考え事をしている私は、天井を見つめながらつぶやいた。
私は…
これから先…
どないしたらええねん…
大番頭《おおばんと》はんたちとマァマが行方不明になっているので、ものすごく困っている…
そのまた上に…
道後温泉街《どうご》で暮らしているドナ姐《ねえ》はんも音信不通になった…
私は、1976年1月から1994年9月30日頃まで海外に滞在していた…
1994年10月の始め頃に来日した…
来日してから7ヶ月の間、京阪神《アーバンネットワークエリア》と九州北部の各地を放浪しながら大番頭《おおばんと》はんたちとマァマを探したけど、見つからなかった。
もしかしたら…
私は…
だまされた…
かもしれない…
もし…
それがホンマだったら…
…と思うと…
私は、アレコレと考えて見たけど答えは見つからなかった。
ほんならどないしたらええねん…
私は…
西成《カマ》の住人《おっちゃん》たちと同じ人生を送ることになるかもしれない…
………
翌朝7時半頃であった。
私は、公園で行われている炊き出しの列に住人《おっちゃん》たちと一緒に並んでいた。
炊き出しを受け取ったあと、ベンチに座って朝ごはんを食べていた。
そんな時であった。
ももけた(ボロボロ)作業服姿の住人《おっちゃん》が私に声をかけた。
「おいぼうず!!」
「は?」
「ぼうずは年齢《とし》なんぼぞ!?」
「なんぼって…23…だけど…」
「23…若いのぉ〜…ぼうずはなんで西成《カマ》ヘ来たんぞ!?」
「なんでって?」
住人《おっちゃん》は、ものすごくあつかましい声で私に言うた。
「おいぼうず!!」
「(ものすごくめんどくさい声で言う)なんやねん…」
「ぼうずは親御《おや》おるんか!?」
「親御《おや》?」
「親御《おや》おるんかおらんのかどっちや!?」
「(ひねた声で言う)親御《おや》おらん!!」
「うそ言うな!!」
「(むきになった声で言う)いてへん言うたらいてへん!!」
「ホンマか!?」
「ホンマにいてへん!!」
住人《おっちゃん》は、私にあつかましい声で言うた。
「ぼうずは、なんとも思わへんのか!?」
「なんとも思わへんのかって?」
「ぼうずはなーんも分かってへんみたいやのぉ!!自分の胸にてぇあててよおーに考えてみろ!!」
自分の胸にてぇあててよおーに考えてみろって…
どういうこっちゃねん…
ワケがわからんなったワ…
住人《おっちゃん》は、なおもあつかましい声で私に言うた。
「ぼうずの耳に親御《おや》の泣き声は聞こえんのか!?」
はっ?
親御《おや》の泣き声が聞こえんのかって、どういうこと?
私は、コンワクした表情でつぶやいた。
住人《おっちゃん》は、ますますあつかましい声で私に言うた。
「コラ!!コラといよんのが聞こえんのか!?」
「(めんどくさい声で)なんやねん…」
「コラは、ワシがいよる言葉が分からんのか!?」
「(めんどくさい声で)せやから、おっちゃんはなにが言いたいねん…」
「(ますますあつかましい声で言う)ワシはコラに家へ帰れといよんじゃ!!」
「(めんどくさい声で)家?」
「せや!!」
「(めんどくさい声で)家ってなに?」
「(ますますあつかましい声で言う)ぼうずの家はどこぞ!?」
「(ものすごくひねくれた声で)家なんかあらへんねん!!」
「(ものすごく怒った声で)よいよい、コラはすなおじゃないのぉ〜!!家がなかったら一番困るのはだれやとおもとんぞ!?」
「(めんどくさい声で)もうええねん…おっちゃんのおこごとなんぞ聞きとないワ…」
住人《おっちゃん》に対してめんどくさい声で言うた私は、ショルダーバッグをたすきがけにした状態でベンチから立ち上がった。
住人《おっちゃん》は、公園から立ち去ろうとした私に怒った声で言うた。
「コラ!!どこへ行くんぞ!?」
私は、住人《おっちゃん》に対してひねた声で言うた。
「居場所がなくなったから旅に出るんだよ…西成《ここ》は居心地がものすごく悪いねん…って言うか…こなな日本国《クソッタレのくに》に来て大失敗したわ…おっちゃんがどないにお説教しようともオレはオレや!!…それだけは言うとこわい…ほな、しゃいなら!!」
その後、私はショルダーバッグを持って公園から立ち去った。
おっちゃんは、全身をワナワナと震わせながら怒っていた。
(ピーッ、ゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトン…ゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトン…)
時は、夜9時過ぎであった。
私は、下りの寝台特急なは号に乗って再び九州ヘ向かった。
私は、個室B寝台の部屋にいた。
ベッドに寝ている私は、ふてくされた表情で天井を見つめながらつぶやいた。
西成《かま》の住人《おっちゃん》は、私に対して『家がなかったら困るのはコラだぞ!!』と言うた…
家がなかったら困ると言うテイギが全く分からない…
結局、住人《おっちゃん》は私になにが言いたかったのか?
寝るところと食べ物がなかったら困る…
フロに入れなかったら困る…
………
分かるように言うてほしかったなぁ〜
………
他に困ることって、なんやねん…
高校《コーコー》?
高校《コーコー》は、レポート提出のみで卒業単位を取得したからなーんも困ってへんワ…
小学校・中学校・高校からマサチューセッツ工科大学までぜーんぶレポート提出のみで卒業単位を取得した…
並行して、アメリカ合衆国の国防総合大学と超有名医大ヘ行った…
仕事に必要な資格・9999億9999万9999種類と9999億9999万9999号の修士号・博士号を保有している…
…という事が言えんかっただけや…
住人《おっちゃん》は、他にも『嫁はんはいらんのか!?』とも言うた。
嫁はんはいらん…じゃなくて必要ないんだよ…
あのとき(私が実母の胎内《なか》にいた頃)、事務長《じむちょう》はんが『恋愛《こい》をしたらのぼせるからダメ!!』と言うて、私に『恋愛《こい》をするな!!』とか『結婚するな!!』…と言うて私に生涯独身で通せと強要《めいれい》した…
事務長《じむちょう》はんが『セヴァスチャンじいさんの厳命《めいれい》にしたがえ!!』と言うたけん、私はその通りの人生を送った。
ところが、大番頭《おおばんと》はんたちとマァマが行方不明になったから話にならへん…
そういうことで、私はだまされてしまった…
…と言うことや。
こなな思いをするのであれば、社内恋愛をスイシンしている大企業《カイシャ》に就職した方がよかったわ…
社内で知り合った女性《カノジョ》と恋愛《こい》をして…
入籍《けっこん》して…
一姫二太郎サンサンシでシアワセイッパイ…
…の人生の方がよかったわ…
いや、まてよ…
やっぱり、生涯独身の方がいいと思う…
結婚なんぞイヤや!!
生涯独身の方が気楽でええわ!!
…………
そのように思ったのは…
あの日や…
あの日は…
施設で暮らしていた子ども同士の結婚式があった…
あの時…
イビツなもめごとが発生した…
その時の様子を…
私は目撃した…
…………