シークレットベビー~初めまして、愛している。記憶喪失からはじまる二度目の結婚生活は三人で~
プロローグ
「初めまして…」
姉の千紗の話だと彼は私の元夫らしい。
ひき逃げに遇った私を救ってくれたのが目の前に居る元夫・桑原慧斗(クワハラケイト)さん

でも、今の私にはその助けられた記憶も彼が元夫だった言う記憶がない。
事故の際、部分的に記憶が抜け落ちていた。

「愛してる。弥紗(ミサ)」と彼はそう甘く囁き、私を抱き締める。

漂白剤でブリーチされたように真っ白になった脳内がバラ色に染まっていく。


こうして、彼に抱き締められたのは初めてではないんだろう。

どうして、私達は離婚してしまっただろうか…


私は彼の腕の中で疑問に思っていた。


「あたしのママだよ!!とらないで!!おじさん」

と私の足許に小さな女の子が纏わりつく。

「あ…理沙ちゃん」

彼は私から離れ、理沙に話し掛ける。

「おじさんはだれ??」

「おじさんじゃなくて・・・」
彼はその場に縫い留められたように動きを止め、押し黙ってしまった。
子供の扱いには慣れていない様だ。
理沙は私の娘。娘の事は良く覚えていた。
でも、この子のパパは慧斗さんらしいが、全く記憶がない。


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