シークレットベビー~初めまして、愛している。記憶喪失からはじまる二度目の結婚生活は三人で~
結局、パーティーは何の収穫もなく、終わった。
私は事務長と同じタクシーで乗り込み、帰りを急ぐ。

「理沙ちゃんの為にもキチンと父親である桑原さんには子供の存在を告げるべきだと思うぞ」

「それは分かっているんですが…」
「そもそも何故、離婚したんだ?やはり…」

事務長は私達姉妹の遺伝病の事は知っていた。

「そうか」

彼はそれ以上は何も言わなくなった。

「彼だって…その…再婚した女性と子を儲けると思いますし」
それがお義母さんの願い。彼の桑原家の長男の役目。
「理沙の存在を知れば、新しい奥さんだって気を悪くします」
彼はきっとまた結婚する。
でも、私は…ダメかもしれない。


パーティーに参加するんじゃなかった。

私は俯き、心の中で後悔していると事務長の低く優しい声が聞こえた。

「今度、二人いや三人で食事に行くか?神崎」

「事務長?」

「理沙ちゃんは何がスキだ?」

「あ…ハンバーグです」

「ハンバーグか…ハンバーグの美味しい店、捜しておくよ」



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