シークレットベビー～初めまして、愛している。記憶喪失からはじまる二度目の結婚生活は三人で～

一日の業務を終え、私は保育所に向かって歩いていた。

「弥紗」

後ろから急に右腕を掴まれた。

私の腕を掴んだのは慧斗さん。

「慧斗さん貴方…？何故ここに？」

「話があって来た」

慧斗さんの表情は険しく眉間にシワが寄っていた。

「理沙の事だ・・・」

離婚して四年、彼がようやく理沙の存在に気づいた。

「探偵を雇い、色々と調べた。君には理沙と言う娘が居る事が判明した。君に再婚歴はない。理沙は誰の子だ？もしかして、最後の夜の…」

「理沙は私の娘です」

「俺が訊いてるのは父親だ。弥紗」

彼は強い口調で迫った。

「おいっ！？君」

私と慧斗さんの間を割り込む形で伊集院先生が入って来た。

「君は神崎さんのなんだ?彼女、困っているぞ」

「俺は彼女の元夫・桑原慧斗だ」

「元夫か・・・」

伊集院先生は私の様子を一瞥した。

「今はお話できません。私、急いでいますので、失礼します」

私は慌てて駆けだした。

「おいっ！？弥紗！！！」

私は慧斗さんの声を完全に無視して保育所に急いだ。