シークレットベビー~初めまして、愛している。記憶喪失からはじまる二度目の結婚生活は三人で~
二人で人気のない中庭に出た。

秋色に色づいたイチョウの木、穏やかな風が舞う中、ベンチに腰を下ろした。

「仕事は?」

「休んだ」

「いいの?」

「今一番、俺の大切な事は理沙の話だ。理沙が誰の子か君の口から訊きたい」

「理沙は…正真正銘貴方の娘です。納得しました?」

「やはり、そうなんだな。あの時の…羽田を発つ前に緊急ピルを飲めと言ったのに、飲まなかったのか…」

「飲み忘れました」

「ドバイに飛んだのはいいけど。事業が順調に軌道に乗った矢先にコロナが蔓延した。コロナの影響で事業は暗礁に乗り上げて・・・色々あってドバイから帰国するのに二年以上かかった」

「そうなんだ…」

「どうして俺に何も話してくれなかったんだ?」

「私にとってもう貴方は赤の他人だから…」



「理沙にとっては他人じゃない。父親だ…」

声を強め、私に訴える。

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