シークレットベビー~初めまして、愛している。記憶喪失からはじまる二度目の結婚生活は三人で~
「もしかして、あの事務長とパーティーでお付き合いでも始めたのか?」

「はい…彼は私の遺伝病の事を知っています。理解もしています」

「そっか。それなら安心だな。理沙は女の子だし、病気は発症してないようだな」

「うん」
「それは安心だ。このままスクスクと元気で健康で育って欲しいな」

彼は喜びの言葉を紡ぎながらも、何処か寂し気に空を見た。

「…俺の取り越し苦労だな」

慧斗さんは先に腰を上げた。

「理沙の事も大切してくれそうか?」

「えぇ―・・・」

「じゃ俺の出る幕はないな。でも、父親として金銭的な援助は娘の理沙に申し出たい。それはダメか?」

「それは…」

「これは父として唯一俺の出来る事だ。ダメだとは言わないで欲しい」

「貴方は又他の女性と結婚するでしょ?桑原家の世継ぎの役目があるし」


「そうかもしれないけど…」
彼は言葉を濁し、瞳を伏せる。彼の長い睫毛が影を落とした。

「俺には何も望まない。そんな悲しい事は言わないで欲しい、弥紗」

私との繋がりは切れても、彼と理沙の血の繋がりは切れない。


「わかったわ」

彼の粘り強さに負け、承諾した。

「新しい携帯番号を教えて欲しい。ダメか?」

彼はトレンチコートからスマートフォンを取り出した。




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