シークレットベビー~初めまして、愛している。記憶喪失からはじまる二度目の結婚生活は三人で~
そして、ドバイに来て二年の月日が経ち、事業の継続を断念して、ようやく日本に帰国した。

帰国した俺が一番驚いたのは母の変わり果てた姿だった。

母もまたコロナに感染、中等症で入院したが、感染による合併症で脳梗塞となり、右半身麻痺、認知症を併発して、特別養護老人ホームのお世話になっていた。

父と姉はドバイで仕事をする俺を気遣い、母の事を隠していた。


俺の中での母は今でも元気で小うるさく世話を焼く姿しか思い浮かばない。

未知の新型ウィルスの中で、俺の人生観も変わってしまった。


『ジュテーム東京』

我が社の新規事業で始めた結婚相談紹介サービス『ラブパレット』

今日は『ラブパレット』主催の婚活パーティー。

俺と秘書の伊澤朗(イザワロウ)の二人で、パーティーの視察に訪れた。

伊澤は俺と共にドバイで仕事をした同僚。
彼は海外赴任経験が豊富で、海外赴任の初めての俺に色々と世話を焼いてくれた。

彼の存在はコロナ禍において、俺の中では一番大きかったし、支えになった。

彼は帰国後東京支社長に就いた俺の希望で秘書に就いてくれた。

「支社長もこのバラのブローチ着けて、婚活しますか?」

パーティーの参加者は皆、参加の証として白いバラのブローチを着ける。
「俺はいいよ…遠慮しとく」

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