シークレットベビー~初めまして、愛している。記憶喪失からはじまる二度目の結婚生活は三人で~
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養育費を出す以上、遠目でも娘の理沙の顔を見たいと思い、伊澤と二人で車内から、病院を徒歩で出て行く弥紗を尾行した。
「今日はお一人ですね」
「みたいだな」
「帰りますか?」
「いや」
俺はバレないように帽子を被って変装して、双眼鏡で後部座席から弥紗を見ていた。
「今日の弥紗の服、可愛いな」
「弥紗さんには恋人居るんでしょ?諦め悪いですよ。支社長」
「理沙を見たら、諦める」
「娘の顔見たら、一層想いを募らせると思いますけど」
弥紗は何処か悩まし気だった。
事務長と喧嘩でもしたのか?
俺は一度も弥紗と喧嘩した事ないぞ。
「!!?」
俺が弥紗に気を取られていると脇見運転か、一台の黒のGクラスのベンツが青信号で進入して弥紗と接触した。
そして、弥紗が倒れ込んだ。
「弥紗っ!?」
俺は慌てて車内から飛び出して轢かれて、横断歩道に倒れ込んだ弥紗を救いに行った。
ベンツは弥紗を轢いて、そのまま逃走した。
そして、弥紗は俺の事を忘れてしまった。