一期一会。−2−
…本気か。

花火大会には、一度も行ったことがない。

組の人達から誘われることもあったけど、いつも断っていた。

まず、人が溢れてるところに行きたくない。

人混みって酔うんだよな…。

『…無理』

100%善意って分かってるから断りづらい。

俺の返事に、彩羽は、「え…」と悲しげな顔をする。

それを見た周りが、面と向かって非難はしてこないものの、此方をヒソヒソと見ながら囁き合っている。

全部聞こえてんだよ。

…あぁ、めんどい。

「何々?花火大会あるの?」

『頼人!頼人も行こうよ!』

も、ってなんだ、“も”って。

俺は行かねぇからな。

パンフレットを覗き込んだのは、親友の頼人。

頼人は、この手のイベントは好きそうだ。

もとより、コイツ陽キャだし、地が明るいしな。

「楽しそうだね、行こっかな」

『本当!?』

祭りトークに花を咲かせる二人を眠い目で見やる。


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