一期一会。−2−
頼人は乗り気らしい。

…あ、この流れ不味い気がしてきた。

「浴衣着たいね」

『いいね』

順調に話が進んでいく様子を冷汗を流しながら見つめる。

頼人が賛成派についたら、ますます断りにくくなるじゃん。

「和も行こうよ、祭り」

ほら、拒否を許さない。

にっこり、キラキラスマイルで頼んでくる。

黒さが1ミリも無いのに怖い。

『…嫌だよ』

「来るよね?」

本気でうちの親友怖ぇ。

頼人に命令…、じゃなくて、頼まれたら肯定するしかない。

行きたくねぇのに。

『…行きます』

葛藤を殺して、受け入れた。

意気消沈してる俺に反して、彩羽が飛び跳ねて喜んでいる。

「やったー」

…まぁ、その様は可愛いけど。

他の男達が、邪な目でお前のことを見てるってことに気付けよな。

鈍感なのか、鋭敏なんだか。

…祭りに行くのは面倒だけど、彩羽が喜ぶなら、まぁいいか。

奥薗彩羽。

命知らずで、無邪気で、強かな女。

でも、それ以上に。

『…お前って本当、可愛いな』

ボソッと呟いた言葉は、誰の耳にも届かずに消えた。



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